待ちに待った瞬間だった。2巡目に突入したWリーグフューチャーで唯一白星のなかった姫路イーグレッツが、11月23日のプレステージインターナショナル アランマーレ戦でシーズン初勝利。序盤こそ秋田が先手を取る展開だったが、第1クォーターのうちに姫路が盛り返すと、接戦に突入。前半終了間際に那須みらいのディープスリーが決まり、2点リードして折り返した。後半は姫路が最大9点差をつけながらも拮抗した展開が続いたが、姫路は相手に主導権を明け渡すことなく、リードを守りきって歓喜の時を迎えるに至った。
「試合の入りから40分間、自分たちのゲームプランでバスケットをするというのが毎試合変わらないテーマなんですけど、今日はダメな時間帯があってもみんなでハドルを組んで、自分たちがやりたいバスケットを最後まで全員が意識してできたのが、こういう結果につながったかなと思います」
このように、司令塔の那須はチームのまとまりを勝因に挙げたが、その那須の働きが試合に大きな影響を与えたことも間違いない。チーム最長の37分8秒出場で、27得点7リバウンド3アシスト5スティール。27得点と5スティールは、いずれもWリーグでのキャリアハイだ。攻守両面でチームに流れを引き寄せる躍動ぶりだったが、那須自身はチームメートがいなければできない活躍だったことを強調する。
「点が取れたのはたまたまというか、フォワード陣が走る仕事をしっかりやってくれて、そこで今日は自分が空いたし、センターがスクリーンからダイブとかリバウンドを頑張ってくれたから、自分がノーマークのシュートや簡単なレイアップを打てる回数が多かった。周りに生かされたなと思います」
司令塔というポジションである以上、那須も「速い展開の中で周りを生かすことを考えながら」ということを心がけてはいるが、それが上手くいかないこともある。自分で積極的に得点を狙うか、他の4人にボールを回すかという状況判断は難しく、試合展開や個々の調子など様々な要素によってそのバランスを変える必要もある中、常日頃から天日謙作ヘッドコーチのアドバイスを受けているという那須は、この試合でその成果を出すことができた。
「パスだけになってしまうときもあったし、『自分が、自分が』になっちゃって、周りが空いてるのにタフショットを打つところもあったんですけど、そういうときにいつも天日さんが声をかけてくれるので、今日は自分が思うようにバランス良くプレーできました」
今シーズンはHCが代わり、得点源の石牧葵もトヨタ紡織への移籍でチームを去った。これまでとは異なるバスケットスタイルを構築しなければならず、その浸透もまた一朝一夕にはいかないもの。那須も初勝利までの道のりを「めっちゃ長かった」と振り返るが、その過程を経てチーム全体が少しずつながらも成長しているという実感はあり、この日の勝利でその実感はより強くなったようだ。