「声を出すことは初歩的なことだと思うんですけど、このチームはそういうことがあまりできてないなと思ったので、まずそういうことをチーム全体でしっかりできるようにしたいと思いました。自分はそんなにリーダーシップを取るタイプではないんですけど、とにかく声を出すということは意識してやってます。良い意味でも悪い意味でも、このチームは仲が良すぎるところがあって、練習の中でも良くないプレーを注意できなかったりするというのもあったので、みんなが自発的にそういうことができるようになればと思って声を出してます。ENEOSに比べるとまだまだ全然足りてないんですけど、私が入った頃に比べるとだいぶ良くなってきてると思います」
高卒でENEOSに入ることができたのはポテンシャルを持つが故だったが、周りの選手も主力は日本代表でも中心となるような選手ばかり。選手層の厚さに加え、故障に悩まされた時期もあったことから、ENEOS時代のモハメドは満足な出場機会を得ることができなかった。それだけに、今秋田でベンチスタートながらも出場時間を確保できていることは何にも勝る喜び。「バスケット選手は試合に出てなんぼ」と語るモハメドは、たとえ自分のプレーに納得していなくてもコートに立てることに感謝し、それをエネルギーにしている。
言うまでもなく、チームの目標はWプレミアへの昇格。スターが揃っているチームではないが、9月のユナイテッドカップでは日立ハイテクをオーバータイムの激戦の末に破ることができた。十分に可能性のあるチームだということを、モハメドも感じている。
「確かにプレミアの選手と比べると実績は持ってないですけど、ユナイテッドカップでハイテクにも勝てたし、やればできる。そこは、プレミアだからとかフューチャーだからというのは関係なく、気持ちで負けないことだと思います。
練習中から声かけをもっと意識して、それを試合の中でもできるようにというのと、プレミアのチームには要らないファウルとか無駄なターンオーバーがないと思うので、それをなくせるようにしていきたいです。勝利をどんどん増やせるようにしていきたいし、個人としてはリバウンドと、スタッツに残らないところもチームから期待されてると思うので、その部分でチームを引っ張れるように頑張っていきたいと思います」
神奈川県で生まれ育ち、高校は愛知・桜花学園に進学。その後、千葉県柏市を拠点とするENEOSでプレーした。失礼を承知の上で言えば、モハメドがこれまで過ごした土地と比べると秋田は都会ではない。ただ、都会の喧騒に慣れているモハメドにとっては新鮮でもあり、今まで以上にバスケットに集中できる環境でもある。おそらくは精神的な面でも良い影響があるに違いなく、その意味でも秋田でプレーするチャンスを得られたのは幸いだったのではないか。
「私たちが住んでる所は本当に周りに何もなくて(笑)、遊べるような場所もないんですけど、だからこそオフの日はのんびりできて、良いリフレッシュができてると思います。ゆっくり散歩するだけでも、のどかな空気が流れてて落ち着きます」
古巣・ENEOSが強豪たり得ている理由を、モハメドは「一つひとつのプレーに責任を持つこと」と説明。そして、自身の実力を証明できないまま離れることとなった古巣に対し、「見返したいです」と本音も漏らした。そのためには、やはりWプレミアに昇格して対戦し、躍動する姿を直接見せるのが一番。今後、モハメドのプレーからはより強い責任が感じられるようになっていくだろう。
文・写真 吉川哲彦