「ファイナルはシーズン集大成だったので、思いっきりできていた部分があります。でも、リーグ戦は長いですし、まだはじまったばかり。昨シーズンよりもっと努力し、個々にステップアップし、成長していかなければいけないです。まだ完成にはほど遠く、昨シーズンの富士通のバスケを思い出している段階です。チームの基盤はずっと変わらず、ディフェンスからブレイク。選手は1人しか代わっていないですが、もっとディフェンスのアグレッシブさやシュートを高確率で決めていく部分はしっかり上げていきたいです」
今シーズンは追われる立場になったが、内尾自身は良い意味でピンと来ていない。「正直、私自身はじめての優勝だったので、追われる立場というよりはまだまだ挑戦者。もっと上手くなりたい気持ちの方が強いです。他の選手は分からないですが、自分は追われる立場とは全く考えていないです」と話すとともに、優勝したからこそ芽生えた別の感情があった。
「今まではどう勝っていけば良いかが分からなかったですが、(ENEOSサンフラワーズで)優勝を経験したメンバーが加入し、どう練習をして、どう勝っていけば良いかを学ばせていただいたのが昨シーズンでした。そこをベースに、今シーズンはもっと自信を持ってプレーしていきたいです」
チーム生え抜きの町田瑠唯と、優勝経験を引っ提げて移籍してきた宮澤夕貴と林咲希が富士通の中心である。1997年生まれの内尾や同い年の藤本愛紀、ひとつ下の赤木里帆と江良萌香、奥伊吹ら長く富士通でプレーする中堅選手たちが底上げし、さらなる殻を破らねばならない。
「自分らの世代がしっかり自信を持ってプレーをすることで、先輩たちの負担が減ります。また、そうすることでよりチームとして戦えていることは、昨シーズンのファイナルでも感じられました。ベンチにいてもスタメンでも関係なく、しっかりチームとして戦っていけるようにしたいです」
昨シーズンの内尾は得点でトップ20に入っておらず、アウォードで何か賞をもらったわけでもない。だが、テーブスヘッドコーチが信頼する優勝の立役者であり、富士通での存在感は大きい。数字に残らない活躍でも、ついつい目で追ってしまう魅力がある。
今シーズンからホーム&アウェーを明確にしているWリーグ。富士通が拠点とする神奈川開催では、カルッツかわさきもスカイアリーナ座間も満員の盛況を見せている。今週末(11月16日・17日)は横浜武道館でシャンソン戦、翌週(11月23日・24日)はとどろきアリーナにて日立ハイテク クーガーズ戦とアリーナを大きくしながら、ホームゲームが続く。
文・写真 泉誠一