水野は、昨シーズンの開幕前に結婚を発表している。Wリーグでも現役中に結婚した選手は過去に数名いたものの、結局1シーズンで引退してしまうケースがほとんど。2シーズン目に突入した水野は貴重な例だ。「パートナーの理解もあって、自分の好きなようにやらせてもらってます」という水野には、1人のアスリートとして思うところも少なからずあるようだ。
「結婚して選手を続けるというのがWリーグではあまりなかったというのは自分も知ってたし、1年で辞めちゃうと『水野も同じなんだね』と思われるのがちょっと嫌だなというのはありました。結婚してもバスケットは続けられる、選手としてやれるというのを見せたかったというのもありますし、そういう生き方もあるというモデルになっていけたらと思ってます。そもそも結婚してバスケットを辞めるつもりは全然なくて、プライベートもバスケットも両方充実させたい想いがずっとありました。結婚したからどうこうということは、何も考えてなかったです」
確かに結婚は人生の中でも大きなイベントであり、特に女性にとっては節目や転機になる場合も多い。しかし、水野にとってはバスケットと同様に、数あるライフプランの中の1つ。2年前、東京羽田への移籍という大きな決断をしたことで、簡単にバスケットから離れることはできないという想いも強くなっている。人生をより充実させるためには、結婚もバスケットも今の水野に必要なものなのだ。
「山梨から移籍してくる前は『辞めてもいいかな』とも思ってたんですけど、今はヴィッキーズというチームが好きで、ここまでの結果に満足してなかったし、2部(Wフューチャー)のままでは辞められないと思ったので、まだまだやりたいという気持ちが今は一番強いです」
言うまでもなく、チームの目標はWプレミア昇格。連勝していれば当然手応えもあり、その一方で、幸先の良いスタートにも満足せず、気を引き締めていこうとしている。
「変に先を見ることなく、1つ1つの試合を大切にして、今やるべきことにフォーカスして、全員が力を発揮できれば全勝優勝にもつながっていくと思います。連勝のこともあまり意識せず、目の前の試合に集中してやっていきたいです」
アランマーレ戦は水・木曜という変則開催だった上、有明アリーナのサブアリーナという小さい会場で、必然的に観客数も限られた。東京羽田が誇るホームコートアドバンテージは失われてしまうかと思われたが、青色のTシャツやユニフォームをまとったファンの熱は変わらず、水野も「この間のアウェーもそうだったんですけど、今日みたいな試合で勝てるのは声援の後押しのおかげ。本当にありがたいです」と感謝の気持ちが大きい。今シーズンも、最愛のパートナーやファン、そしてチームメートとスタッフの支えがあってこそ、水野菜穂は躍動する。
文・写真 吉川哲彦