迎えた最終週、山梨クィーンビーズとの第1戦で前半の10点リードを守ることができず、2点差で黒星。ホーム6連戦全勝フィニッシュを逃し、トーンダウンしてしまうことが懸念されたが、東京羽田は誰一人下を向かず、勝利でファンを送り出すために最終戦を戦った。前日から翻って10点ビハインドを背負って折り返しながら、第3クォーターの28得点で試合の流れを変え、65-56の白星。試合を動かしたのは、前週の第2戦で負傷した脚がまだ万全でないにもかかわらず、この日の後半開始時にコートに立つことを志願した本橋菜子の強い意志だった。
「みんながモヤモヤしてるというか、思いきりプレーできてないなというのがあって、後半の出だしの戦い方が大事だと思ったので、そこをリードしていきたいと思って自分から言いました。昨日も今日も出だしでもたついてしまったんですけど、今日は後半で全員がしっかり立て直して勝ちきることができて良かったです」(本橋)
その本橋は「本当に素直で頑張り屋さんが多い。それを上手く力にできるとシャンソン戦のような勝ちにつなげられるんですけど、想いが強い分、負けが続くと立ち直るのが難しくなってしまう」とチームを評した。気持ちが強くなるあまり、それが力みやプレッシャーを生んでしまうということは、萩原HCも「真面目すぎて空回りするんですよ。一生懸命がゆえに、練習で出ないようなターンオーバーとかディフェンスミスが出て、それが連鎖しちゃう」とシーズン中から指摘していた。
「本人たちも言ってたんですけど、思い入れが強い分硬くなっちゃう。勝ちたいって思うからすごく力が入って、気負っちゃうんですよね。頑張りたいと思うのは良いことなんだけど、普段通りに、自分たちの力を信じて臨むことが大事。それはやっぱりこういう舞台を経験して得られるものなので、次のシーズンにつながってくれるといいなと思います」
この最終戦も前半は力が入ってしまっていたが、星澤真が「最後まで良い顔をしてプレーしようとし続けたことが勝利につながった」と言うように、“Believe4” の効果も表れたことは確かだ。そして、おそらくはその星澤こそがシーズンを通して最もプレッシャーを感じていたのではないか。「やる気が空回りするタイプ」を自認しながらもキャプテンを任され、笑顔の裏ではチームの士気を上げることに必死だったに違いない。自分なりのキャプテン像を模索する中、シーズン終盤はオフェンスリバウンドをもぎ取る場面が増えた。「こうして終わってみると、そういうところでちょっとずつでもチームに貢献できたかなと思います」とプレーでチームを鼓舞できたという感触もあり、大役を果たせたという安堵が窺えた。
来たる2024-25シーズン、東京羽田はWリーグフューチャーでスタートする。同リーグに所属する他の5チームとは、昨シーズンの対戦成績が7勝3敗。その5チームと5度ずつ対戦する今シーズンは、例年より勝率は上がるだろう。チームとしての目標はもちろんWプレミアに昇格することだが、2位で入替戦を戦っての昇格ではなく、1位での自動昇格。それも、全勝を狙っているという。
その目標に向け、チームは7月のサマーキャンプまでに2回の合宿を実施したほか、その後のユナイテッドカップまでの約2カ月間は練習試合を増やし、実戦で都度課題を洗い出しては克服のための練習を重ねてきた。サマーキャンプの時点で、チームが例年より仕上がりが早い実感があると津村は言っていた。