半分がルーキーであり、シャンソン化粧品シャンソンVマジックから移籍してきた金田愛奈を含めて7人が新たに加わったトヨタ自動車は、「私も一ファンとしてどういうチームになるのか想像がつかなかったです」とワクワクする。「今年のトヨタのメンバーを見て、このチャレンジはおもしろそうかもしれない。このチームの一員になりたい」と好奇心が上回り、32歳のルーキーが誕生した。
今シーズンのキーワードは「フォロワーシップ」
ユナイテッドカップなどこれまで出場機会がなかった桂だが、開幕戦は20分33秒出場し、3ポイントシュートを2本成功させた。十分な準備を経た結果かと問えば、「恥ずかしい話ですが ── チームに合流して一番最初のメニューで走ったときに肉離れしちゃいました。そのため練習試合も1試合だけ、本当にギリギリ開幕に間に合わせた感じでした」と本気で5人制バスケをするのも10年ぶり。フルコートはやっぱり3×3とは勝手が違った。
「(開幕へ向けて)最低限の戦術はもちろん頭には入れられたとは思いますが、まだそれをどう表現すれば良いか、チームのみんなも私がどんな選手かもまだ分かっていないと思います。私自身もこのチームでどういう貢献をしていけるのか、どういう選手になることがこのチームの役に立つのかは、まだまだこれからです。今日はスリーポイントを2本決めましたけど、それがチームにとって必要なことなのか、本当は違う役割があるのかなどをこれから模索していきたいです」
ルーキーながらもチーム最年長。2つ下の安間志織やキャプテンの山本麻衣にとっても心強い存在と言える。「今は桂もしっかりアクションを起こしてくれるおかげでチームケミストリーも良く、すごく良い雰囲気でできている。選手同士でミーティングすることも頻繁に行っているので、他のチームよりもこれからもっともっと成長できる可能性はある」と大神ヘッドコーチも期待を寄せる。今シーズンのキーワードとして「フォロワーシップ」を掲げる桂は、積極的にチームへ溶け込んでいた。
「麻衣ちゃんや志織、平下(愛佳)が引っ張ってくれるところに対して、1番最初についていく。後ろからみんなの背中を押していくことが、このチームでの役割だと思っています。長くチームにいる彼女たちと新人選手たちを、自分も含めて少しでも近づけていくのが今シーズンの役割だと思っています」
開幕戦を終えた直後、Wリーグのコートに立った実感はあまりなかった。しかし、自ら感想を述べる第一声はしっかりと記録され、新たな物語を紡ぎはじめた。
「感慨深い部分や高揚する部分は持ちつつ、でも今日は本当に冷静に、淡々と目の前のバスケットに向き合いたいなとすごく思ってコートに入ったので、その点に関しては浮き足立たずに相手にも、チームとも向き合えたかなと思います。自分の中では及第点をあげたいですけど、今日の試合はディフェンスのところが課題として浮き彫りになりました。おこがましいかもしれないですが、もう率直に悔しいし、成長していかないといけない部分だなって思います」
文・写真 泉誠一