2023-24シーズンは、Wリーグの各チームにとって重要な意味を持つシーズンだった。2ディビジョン制に移行する次シーズンの振り分けがあるからだ。言うまでもなく、東京羽田ヴィッキーズも1部にあたるWプレミア入りを目指し、前シーズンの反省を踏まえてチーム作りを進めてきた。野町紗希子、岡萌乃、栗林美和といったインサイドの選手だけでなく、千葉歩や岡田真那美というウィングの選手も迎え入れ、総勢15人となった大所帯はポジションバランスを大きく改善し、戦略の幅の広がりも期待させた。開幕1カ月前のオータムカップではトヨタ自動車を撃破。相手が少人数で戦う状況だったとはいえ、我慢強く戦いきったことはポジティブな材料でしかない。
いざシーズンを迎えても、その希望は少なからず感じられた。開幕のトヨタ紡織との第1戦は、新戦力の岡と岡田の活躍が目立った。従来引き出しの多い萩原美樹子ヘッドコーチも、選手層が厚くなればなるほど、その引き出しを活用する機会は増える。
「今シーズンはオプションがたくさんあるんです、『この子が良くなくてもこの子がいる』って。それは昨シーズンなかった要素で、あとはそれを私がどう使いきるか。正直、移籍選手の良さを私がまだ引き出せていないところもあるので、私が頑張りたいです(笑)。
今シーズンは、強豪相手でも1つは取りたい。今日も岡がこれだけしっかりリバウンドを取ってくれるんだと思ったくらいなので、試合をやりながらわかってくることはいっぱいあるんですよね。今日のゲームも取らなきゃいけなかったなと思うんですけど、引き続き選手たちの持つ可能性を信じてやっていきたいです」
第2週は、希望をより大きくふくらませることもできた。シャンソン化粧品との第1戦に敗れ、開幕3連敗となってしまったものの、第2戦は3点差で粘り勝ち。11得点で勝利に貢献した津村ゆり子は試合後、興奮気味にまくし立てた。
「3連敗してて、でも自分たちのやるべきことはできてて、あと一歩というところがあったので、みんな本当に悔しかったと思います。開幕するまでにずっと積み重ねてきて、できるときもできなくなるときもあったんですけど、できなかったときにみんなで話し合って一つひとつ潰してきて、試合を重ねる毎にみんなで成長していってるなって感じてます」
この勝利を生んだ最大の要因は、ホームの大田区総合体育館だった。シャンソン化粧品は第4クォーターに、安易なパスミスなどターンオーバーを連発。これは対戦相手がアリーナの雰囲気に飲まれてしまう、いわゆる “アウェーの圧” であり、ファンの後押しがチームを支えていることを顕著に示す一例だ。
「今日は試合前に “第ゼロ感” が流れてて、ファンの皆さんが男子の日本代表の試合のときと同じ声出しをしてくれてて、ちょっと泣きそうでした。高ぶる気持ちがあったし、声は力になるって改めて感じました。1本バスカンがあったりするとワーってなるのが、集中してても聞こえるから、それでたぶん相手も焦ったりするんだろうなって思います。ホームアドバンテージを使って、ホームではいっぱい勝ちたいです」(津村)