「長年アイシンの弱点だったインサイドの補強ができたのはすごく大きいと思いますし、岡本さんも渡嘉敷さんも優勝の経験というのがすごく大きいので、勝つためのチームの在り方というところも期待して、自分たちもそれについていけるようにと思ってます」
実際に、2人がチームに合流してからは「まだ一緒に練習をやってないんですけど、『声が少ない』って言われて、コートの外から出してくれてる」と、すぐに良い影響が表れたということだ。こうして経験豊富な選手が続々と入ってきたことによる変化は、アイシン一筋11シーズン目となり、生え抜きで唯一のプレーオフ経験者である酒井が誰よりも強く感じているに違いない。
「バスケットに対する姿勢がすごく熱い選手がたくさん入ってきて、その集まりになってきたなというのは感じます。今までいた選手がその姿勢が薄かったというわけじゃないんですけど、どこか『勝てないし』って思っちゃってた部分は正直あって、HCにしろ選手にしろ、『勝つ』という強い意志を持った人が入ってきたのは大きいなと思いますね」
酒井はキャプテンの座を離れるが、重責から解放されるという意識は酒井にはない。むしろ、3シーズンにわたって務め上げてきたとあって、アイシンというチームにおける自身の立ち位置や責任もよく理解している。おそらくは、自身の経験からキャプテンの苦労にもいち早く気づくことができるだろう。
「今シーズンは野口がキャプテンで、サブを渡嘉敷さんと岡本さんがやってくれるんですけど、たぶんそれだけでは足りない。目の届かない若手のケアもしてあげたいと思いますし、上の人から言われたことを下の子たちに伝えるというのはキャプテンだけじゃ補えないと思うので、そこは頑張りたいなと思います」
在籍歴が最も長く、司令塔として、キャプテンとしてチームを引っ張り続けてきた酒井は、「アイシンは会社とチームが近くて、職場から応援されてる感がすごくあるので、恩返ししたい」と語る。さらに、「移籍の選手がいっぱい入ってきてからは会社外のファンの方も増えて、すごく応援してもらえるようになった」と近年のチーム状況がコート外にも良い効果を生んでいることを感じ、「アイシンで勝ちたい」という想いは強くなっているという。
遠ざかっていたプレーオフに辿り着き、プレミアとフューチャーの2部に分かれた今シーズンはプレミアで戦うことができる。昨シーズンの順位は8位と、プレミアの8チームの中では最も低い位置からスタートを切ることになるが、年々順調に強化されている実感から、チームとしての目標は高い。
「優勝を目指してるので、まずはそこに向かって頑張りたいですし、なおかつ見てくださる方に応援していきたいと思ってもらえるチームになることも大切だと思うので、そうありたいです。スタッツに残らないディフェンスとかルーズボールは自分が率先して見せていきたいと思います」
昨シーズンのWリーグは1位から4位までが1ゲーム差の中に入る大混戦。アイシンはそこに割って入り、リーグをより面白くすることを期待されている。
文・写真 吉川哲彦