Wリーグ11連覇、皇后杯10連覇という前人未踏の記録を持つENEOSサンフラワーズが、大きな転換期を迎えようとしている。ここ数年も主力の流出が相次いではいたが、桜花学園高から揃って入団し、チームの大黒柱であり続けた渡嘉敷来夢と岡本彩也花が、在籍14シーズンでついにチームを去った。これにより、移籍3シーズン目を迎える長岡萌映子がチーム最年長となり、生え抜きの宮崎早織が高卒11シーズン目で最も在籍歴の長い選手となる。
今シーズンのキャプテンはその宮崎が務めるが、それを支える副キャプテンの座には、長岡と宮崎に次ぐ年長者の高田静が就いた。今年のサマーキャンプは、宮崎がパリオリンピック出場のため不在で、長岡はチームに帯同こそしたものの、試合には出場しなかった。必然的に、チームのまとめ役は高田が請け負うことになるが、チームとしての結果は思わしいものではなかった。2日目のトヨタ紡織戦は第1クォーターに29失点、第3クォーターに33失点を喫した結果、72-90と点差をつけられての敗戦。高田はこの試合を、以下のように分析した。
「出だしがスロースタートになってしまって、でも前半はそこからテンポを上げて、ENEOSらしいバスケットができたかなと思います。後半は相手がゾーンディフェンスをしてきて、まだゾーンの攻め方も練習してなかったので、そこで停滞したときにディフェンスでも簡単に外のシュートを打たせてしまったし、ピックからのダイブにもやられました。90点は取られすぎだと思うので、課題が出た試合だったなと思います」
今はまだ、チームとしての結果にこだわる時期ではない。実戦でなければわからないこともあり、このサマーキャンプは段階を踏んでチームを完成形に近づけるステップの一つにすぎない。それでも、昨シーズンまでのENEOSなら90失点を超えることは考えにくかった。「勝ち負けというよりは、今練習してるディフェンスのポジション、オフェンスのシステムを試す感じ」と言う高田にも、「オフェンスの部分は改善されつつあるんですけど、ディフェンスはもっと頑張らないといけない」という危機感がある。
ENEOSを絶対女王たらしめた選手が次々に抜け、チームは年々若返っている。手厳しい言い方をすれば、勝ち方を知らない選手が増えてきたということだ。リーグ戦に限れば、ENEOSで優勝を2度以上経験しているのは高田と宮崎、藤本愛瑚の3人しかいない。優勝の味をよく知る高田は、優勝するために何が必要か、その経験が足りないことが具体的にどういうところに表れるかということを理解している。
「若い選手が多くて、フレッシュにできてると思うんですけど、今までのENEOSの精度とか強度という部分はまだちょっと甘いというか、例えばディフェンスのボールマンプレッシャーにしても、今の紡織戦みたいに簡単にシュートを打たれてしまっているというところにつながってる。思いきりプレーしつつ、ボールへの執着心の部分はもっとできないと強くなっていかないと思います」
その中で、高田も「今出てるメンバーでは私が一番上ですし、今までも試合に出させてもらってるので、しっかり引っ張っていきたい」と自身の立ち位置を自覚。「ユラ(宮崎)さんが今オリンピックに行ってて、合流もリーグが始まる直前になるので、ユラさんからも『頼むよ』ということは言われてて、良い雰囲気で練習できるように頑張ってるところです」と言うように、このオフシーズンの間は実質的なキャプテンの役割を担い、チームをまとめようとしているところだ。