中澤は177センチというサイズを備えた自身の持ち味をよく理解していると同時に、よりチームに貢献するためには強みを増やす必要があるということもわかっている。その意味でも、この日大事なところで3ポイントを決めたのは良い収穫だった。
「自分はオフェンスよりディフェンスのほうが好きなので、自分のマークマンに1点も取らせないとか、そういうところで頑張っていきたいし、ディフェンスだけでもチームの勝利に貢献できると思うんですけど、今3ポイントを頑張って練習してるので、そこをもう少し伸ばしていけたらもっと頼ってもらえるんじゃないかなと思います」
そして、その点に関しては石川幸子HCも「本人はディフェンスとリバウンドという話をしてるんですけど、私から見るとシュート力もある。もう少し精度を上げられるようになれば、大きな武器になる」と期待している。中澤がオールラウンダーとして台頭すれば、山梨にとっては心強い。
中澤は、クラブ公式サイトの選手紹介で、尊敬する選手の欄に「父」と書いている。父とは、前身のマツダオート東京時代から長きにわたって埼玉ブロンコスでプレーし、その後HCも務めたチャールズ・ジョンソン。長い腕を生かして得点・リバウンドはもとよりアシストやスティールも量産し、JBL日本リーグ(2部)では2002-03シーズンにチームを優勝に導いてMVPに輝いたほか、その前シーズンには1試合平均9.4個という当時としては異次元の高水準でアシスト王のタイトルを獲った実績もある。
父は現在埼玉県に住み、バスケットスクールで小学生から高校生までを対象に、週5回の指導に従事している。中澤自身は「実はバスケを始めたきっかけは父じゃなくて、友達に勧められたからなんですよ」ということだが、「その後にスクールを開いてくれて、そこに週3くらいで通って」直々の指導を受けた。父からファンダメンタルを手取り足取り教わった中澤には、オールラウンダーの血が流れているのだ。
「今でも電話とかでアドバイスをくれる」という父は、このトヨタ紡織戦も愛娘の応援に駆けつけた。クラブの天野敏彦広報部長によれば、接戦の展開も相まってかなり熱のこもった応援ぶりだったそうだ。
中澤は、山梨クィーンビーズというチームについて「みんな仲が良いし、言いたいことを言えるチームだなと思います。上手くいかなかったこととか、ちょっとここがどうかなと思ったことを先輩後輩関係なしに言い合えるので、何かあってもすぐに改善できるチームだと思ってます」とその雰囲気の良さを語るが、天野広報部長曰く「あの子はいつも笑ってる。彼女もチームの雰囲気を良くしてくれてますよ」とのこと。事実、筆者の取材を受けている間も笑顔が絶えなかった。明るい性格もまた父譲り。フューチャーリーグ初年度優勝とプレミア昇格を目指す山梨に、貴重な戦力が加わった。
文・写真 吉川哲彦