今シーズンからWリーグは2部制に戻り、プレミアリーグとフューチャーリーグに分かれる。ただし、サマーキャンプも2部に分かれて試合をするわけではない。全29試合のうち、プレミア同士の対戦は4試合、フューチャー同士の対戦は1試合しかなく、プレミアとフューチャーの顔合わせが8試合を占めた。
その8試合のうち、フューチャーに軍配が上がったのは2試合あった。1つは、1点差決着となったアイシンとプレステージ・インターナショナル アランマーレ。もう1つが、これも2点差と接戦だったトヨタ紡織と山梨クィーンビーズだ。なお、初日の勝利で勢いづいた山梨は、その後の2試合も社会人リーグを下し、3戦全勝でサマーキャンプを終えている。これはフューチャー所属の6チームでは唯一だ。
サマーキャンプはどのチームにとっても、新戦力の見極めがポイントの一つとなる。現時点でルーキーと移籍加入の選手がそれぞれ1人しかいない山梨も然り。昨シーズンアーリーエントリーで加わったものの、出場が2試合にとどまった中澤梨南の働きは、ルーキーながら必然的に一定のウェイトを占めることになるだろう。その中澤は、このトヨタ紡織戦で18分22秒に出場し、7得点4リバウンド。突出したスタッツではないが、この日の山梨は最多得点が渡邊愛加の11得点で、リバウンドに至っては5本が3人、4本が5人とバランスが取れていた。中澤を含めて多くの選手がオールラウンドに働いたことが、トヨタ紡織撃破という結果につながった。
実は、トヨタ紡織とはサマーキャンプを前に練習試合をしていたそうで、その際は山梨の敗戦だったという。中澤には、リベンジの意識があったようだ。
「練習試合のときに逆転で負けてしまって、勝てるゲームなのに負けてしまったということに対してすごく悔しかったので、今日は絶対に勝つという気持ちがありました。前回リバウンドが負けの要因だったし、後半はリバウンドがカギになるという話がヘッドコーチからもあって、自分の中ではリバウンドには絡めていけたんじゃないかなと思います」
「今日は試合前のシューティングがあまり入らなくて『大丈夫かな』と思った」というが、第3クォーター終了間際にはショットクロックギリギリで3ポイントを披露。「決められるところをしっかり決められたので良かったです」と笑顔を見せた。
サマーキャンプの場合、勝敗は二の次ということはあるにせよ、終始競った展開だった中で出場時間を勝ち取っていたのは、チームに必要とされていることを示す材料になる。実際、チームにフィットしているようにも感じられたが、中澤自身はその実感よりも、まずはチームに貢献したいという想いが先行しているということだ。その背景には、桜花学園高から東京医療保健大と強豪校に身を置いてきた過程で、コートに立つこともままならなかったという事実がある。一見エリート街道を歩んできたように見えながらも、ハングリー精神が中澤を突き動かしているということになるのだろう。
「今までケガが多くてプレーできる時間が少なかったので、今はもうチームのために頑張りたいという気持ちでプレーしてます。もう少しその気持ちを前面に出せたら、得点にもリバウンドにももっと絡めるようになってくるんじゃないかと思うので、もうちょっと待っててください(笑)」