良い形で終わることができたのは、言うまでもなくリーグ制覇を成し遂げたからだ。良い結果を残せるという手応えは、内尾には確かにあった。
「プレシーズンから、細かいところからもっとこうしていこう、ああしていこうっていう声があって、それがリーグ中はさらに増えて、チームとして落ちる雰囲気がほぼなく、ベンチメンバーも盛り上げてくれたり、試合に出たときはアグレッシブに戦ってくれて、本当にチームとして戦ってる感じがしました」
ただチームが強かったというだけでなく、その中で個人としてもしっかりバスケットと向き合い、成長を感じることもできたということが内尾の喜びを大きくした。結果が伴ったのは必然だったのかもしれない。
「本当に自分自身楽しくて、スキルを教えてくれるアシスタントコーチのおかげでプレーの幅も広がりましたし、いろんなプレーを試せる楽しさがありました。コンディションもすごく良かったので、この1年やってきたことを集大成で全て出せて、すごく充実した1年でした」
ファイナルを迎えるにあたっては、ポジティブな感情が内尾を支配していたという。セミファイナルでシャンソン化粧品に1つ黒星を喫しながらも第3戦をしっかり勝ちきった経験から、チーム全体が自信に満ちあふれていることを感じ取っていたのだ。
「不安は特になかったです。3試合目が決まった瞬間から、チームは『やれるぞ』っていう雰囲気でした。セミファイナルも3戦やっていて、だからこそ準備ができたというか、ファイナルも3戦目になって『やっといて良かったね』というのがあったんです」
チームとしては16年ぶりの優勝で、その間に皇后杯の優勝もなかったため、今回の優勝は内尾にとってもWリーグの世界に足を踏み入れてから初めての経験だった。その瞬間、内尾の心中は言葉で上手く表せないほど様々な感情が入り混じった。
「今までに感じたことがないというか……2年前もファイナルに行って、自分はコートに立てなかったし、一緒に優勝したい先輩たちと優勝できなかった悔しさがすごくあったので、今回もその気持ちが強くて、優勝した瞬間は不思議な気持ちというか、嬉しさとか安堵とかいろんな気持ちがあって、これが優勝なのかって思いました」
もちろん、来シーズンも富士通は優勝を目指す。町田瑠唯や宮澤夕貴、林咲希といった代表クラスの選手がいる中、チームにおける自身の役割を確固たるものとし、貢献したという実感を抱く内尾は、「今シーズンは自分自身に伸びしろを感じました」とさらなる成長を期す。それが、優勝チームの不動のスターターとしての誇りだ。
「コンスタントに点が取れる選手がいる中で、自分はディフェンスを仕事として信頼して試合に出していただいてる。それでも、自分の自信のなさでオフェンス面で引け目を感じていて、『攻めなきゃいけない』という気持ちはあったんですけど、『自分がボールを持っていいのか』というのもありました。でも、ファイナルを戦ってみて、ボールも人も動いて誰がどこでも攻められるというバスケができたことで、自分もこうやってボールに絡めばいいんだというのがわかったので、来シーズンもそれを土台にしていきたいです」
文 吉川哲彦
写真 吉川哲彦、W LEAGUE