昨シーズンのトヨタ紡織サンシャインラビッツはセミクォーターファイナルでシャンソン化粧品に敗れ、7位でシーズンを終えた。迎えた今シーズンは新指揮官を招聘し、昨シーズンを上回る成績を期して臨んだシーズン。レギュラーシーズンの勝率は少し下げてしまったものの、順位は昨シーズンと同じ6位であり、日立ハイテクと戦った3月31日のセミクォーターファイナルは快勝し、この時点で昨シーズンを上回ることはできたと言って差し支えないだろう。
翌日のクォーターファイナルは昨シーズン女王のENEOSに58-71で敗戦。3ポイント成功率が13.6%と伸びず、フリースロー成功率も50%を切ってしまったのが響き、トヨタ紡織の2023-24シーズンはここで幕を閉じることとなった。しかし、リーグ2位の得点力を誇るENEOSを71得点に抑えたことは明るい材料。ルーカス・モンデーロヘッドコーチも、試合後の会見では第一声でそのディフェンスに触れ、選手たちを称えた。
「トップのチームに対して、ディフェンスで上手く抑えられたのかなと思います。昨日は輝かしい試合ができたと思いますし、今日も昨シーズンの優勝チームに対してよく戦ったと思います。ENEOSには日本代表の宮崎(早織)がいて、フィジカルの優れている長岡(萌映子)と渡嘉敷(来夢)もいる。そのチームを何度かオーバータイム(ショットクロックバイオレーション)に追い込んでいけたことが良かったです。負けてしまったので喜べないんですが、選手たちは頑張ってくれましたし、昨日の試合は勝てたので誇りに思います」
Wリーグで11連覇していたENEOSの牙城を崩し、トヨタ自動車が初優勝を果たした際の指揮官がモンデーロHC。連覇を置き土産にトヨタ自動車を退団した後も日本に残っていたモンデーロHCは、1年の充電期間を経てトヨタ紡織に迎え入れられた。言うまでもなく、トヨタ紡織浮上の切り札としてである。
とはいえ、勝負の世界はそう簡単に結果を出せるものではなく、当時から選手層の厚かったトヨタ自動車でも就任1年目は優勝に届かなかった。トヨタ紡織もまた、スペイン代表を率いた経験もあるモンデーロHCの力をもってしても、チームが短期間で劇的に変わるわけではない。シーズン序盤には姫路イーグレッツに、そしてレギュラーシーズン最終戦は新潟アルビレックスBBラビッツに苦杯。課題が残されていることを突きつけられたシーズンであったことは否定できない。
上記の会見でのコメントからもわかるように、負けたことを悔やむ前に良いところを評価するポジティブマインドの持ち主であることがモンデーロHCの良いところだ。トヨタ紡織は勝てるはずの試合を落とした一方で、今シーズンの勝率上位4チームに対しては1ケタ点差の試合も多かった。上手くいかないこともあった中で、モンデーロHCは選手の成長、チーム全体の成長を少なからず感じることができた。