今シーズンのWリーグは、女性HCが石川HCを含めても3人しかいない。他カテゴリーでは徐々に増えてきてはいるものの、少数派であることには変わりない状況だ。「女性、男性というのはあまり気にしない」という石川HCも、男女ともにバスケットボール界が盛り上がっている今は大きなチャンスと受け止めている。
「女性でもコーチを目指せるんだと思ってもらえる存在になれるんだったら嬉しいなとは思います。バスケットが盛り上がってほしいし、男女ともにパリオリンピック出場が決まって、そこで逆に私たちはその恩恵を受けてるところだと思うんですけど、日本代表も面白ければWリーグも面白いねって言ってもらえるような環境にしていければいいなと思いますね」
また、石川HCはいわゆる黄金世代の1人でもある。1978年生まれの代はシャンソンでチームメートだった三木聖美や渡邉温子、ライバルチームのジャパンエナジーにいた矢野良子や川畑宏美、他にも三谷藍や榊原紀子、船引まゆみなど日本代表経験者を多数輩出。ただし、その中で現在Wリーグに籍を置いているのは石川HCだけである。名だたる顔ぶれの中で唯一コーチとして国内トップレベルで戦っているという事実も、「ACになったときよりも、HCになったときのほうがみんなすごく応援してくれるんですよ。それはすごく嬉しくて、頑張ろうって思いましたね」と石川HCを奮い立たせる材料になるものだ。人前に出ることが格段に多くなる今の立場で、責任感もより強くなっている。
「決断するのがHCなので、そこを間違わないようにというのは難しいとは思うんですけど、なるべく正解に近いほうを選べればいいなと思います。まだまだなかなかではありますけど(笑)、でもそこがバスケットの面白みだし、HCとしての醍醐味もそこにあるんじゃないかなと思います」
難しいことに立ち向かっていくこともHC業の魅力と言ってはばからない石川HCは、激務である今の仕事を「思った以上に楽しめてます(笑)」と明るく言ってのける。それはやはり、現役時代の下積みの経験から悟ったものなのだろう。HCとしてのルーキーシーズンは幕を閉じたが、山梨で始まった新しいチャレンジは、まだ序章にすぎない。
「申し訳ない話なんですけど、毎日練習メニューを考えて毎日失敗してるし(笑)、たらればですけど試合のタイムアウトとか交代とかももうちょっとこうしたほうが良かったかなとか、自分のミスだよなと思うことが多いです。でも、そういうミスを選手たちも許してくれてるし、もう本当に日々チャレンジできてることが楽しいです。今シーズンは特に失敗してチャレンジしての繰り返しで、もうちょっと時間があればいいのにって思います(笑)。チャレンジすることって怖さもあると思うんですけど、山梨でチャレンジして良かったなって思ってます」
文・写真 吉川哲彦