Wリーグのレギュラーシーズン最終週、山梨クィーンビーズはアウェーで東京羽田ヴィッキーズと対戦。3月16日の第1戦は前半で22得点しか奪えず、10点のリードを許す苦しい展開だったが、後半は逆に相手を18点に抑え、52-50で逆転勝利を収めた。2部制移行前の最後のシーズンで、現行のレギュレーションでは一昨シーズンと並ぶ6勝目となった。前半20分間の戦いぶりを「オフェンスが上手くいかず、ディフェンスも弱気で守ってた」と振り返った石川幸子ヘッドコーチは、ハーフタイムにディフェンスのプレッシャーを指示。その結果、「後半はディフェンスからブレイクが出たり、セットオフェンスも前半よりは良くなったので得点につなげられました」と指示の効果が表れた。
チームとしてはもちろん、プレーオフ進出と1部にあたるプレミア入りを目標に置いていたが、それが叶わなくなった時点で「選手も私もどこに照準を向ければいいのかわからなかった」と石川HCは漏らす。そこで石川HCは選手1人ひとりの気持ちを確認し、「最後の1分1秒までチームとして成長できるようにやっていこう」と改めて試合へのモチベーションを設定。「それが、今日みたいな勝ちにつながったんじゃないかと思います」と、選手たちから戦う姿勢を引き出せたことを実感した。前週には、アイシンとの第1戦でダブルオーバータイムに及ぶ激闘を制している。シーズンを通しての成長という点に関しても、石川HCは良い感触があったようだ。
「ディフェンスは良くなったと思いますし、最後まで諦めない、負けたくないという気持ちは特に後半戦はコートで表れたんじゃないかと思います。アイシン戦も、本当に最後まで頑張ってくれたなって、ベンチで感動してました(笑)」
当然ながら、プレーオフに進むことができなかった現状を考えると、手放しで喜んでいるわけにもいかない。「一つずつ階段を上がってる」という認識を持ちながらも、チーム全体がスタンダードを上げ、シーズン後半に見せた強い気持ちをもっと早い段階から持ち続けなければ、望む結果は得られない。そのことも重々承知の上だ。
「後がないという気持ちもあるとは思うんですけど、プレーオフがなくなった中で思いきりプレーできてるところは、レギュラーシーズンでプレーオフを目指してる中でも出せるものだと思うので、そこは来シーズンに向けての課題かなと思います」
石川HCは、昨シーズンまで日立ハイテクで8シーズンにわたってアシスタントコーチを務めていたが、HCの肩書を背負うのは今シーズンが初めて。山梨からのオファーを「チャンスをいただけるのは嬉しかった」と喜ぶ一方で、自身にHC業が務まるのかという不安もあったという。チームに戦略・戦術を浸透させるだけでなく、選手の士気を高めることや他のスタッフとも緊密に連携を取ること、いざ試合になれば常に瞬時の判断が要求されることなど、チームマネージメントの総責任者であるHCには多くの資質が必要とされる。ACを8シーズンも務めた石川HCですら、「もっと勉強しとけば良かったなって思います(笑)」とその難しさを痛感しているところだ。