10年間、35連敗中のENEOSに逆転勝利
昨年12月の皇后杯で、ようやくENEOSサンフラワーズを倒し、デンソー アイリスは悲願の初優勝に輝いた。しかしWリーグでは、ちょうど10年前となる2013-14シーズンに59-58の1点差で勝利して以来、デンソーは1度も勝てていない。その勝利を知っているのも髙田真希ひとりである。ENEOSの拠点がある千葉県柏市で行われた3月9日の試合は69-81と12点差をつけられ、35連敗目。苦手意識は払拭できていないように見えた。
アーリーエントリーから数えて3年目となる木村亜美も、優勝した皇后杯で勝利するまでは、当然ENEOSに勝ったことがない。前節のトヨタ自動車アンテロープス戦は1勝1敗に終わり、ENEOSとの初戦に敗れたことで連敗となった。上位チームとの直接対決が続く3月は「ここががんばり時であり、プレーオフに向けても本当に大事な試合だということは分かっていました」と木村も気合いを込めて臨んだが、また勝つことはできなかった。
すぐさまやって来る2戦目へ向け、前日の負けも、これまでの連敗も引きずっている者は誰もいない。「今日こそは勝たなければいけない」という危機感とともに、「落ち込むよりも『やるぞ!』とみんなで声を掛け合って、試合に入ることができました」と木村は明かし、より強い気持ちで挑んだ。後半開始早々、ENEOSに3本連続3ポイントシュートを決められ、この試合最大の12点リードを許す。劣勢を強いられる中でも、ポイントガードの木村は声を出し、ディフェンスでは前からプレッシャーをかける。
「40分間すごくタフな時間が続いて、相手の流れになったり、もちろん自分たちの流れが来たりした中で、流れが悪いときにガマンし続けることができました。昨日はそのガマンしなければいけないところで逆に引き離され、特に試合の出だしや第3クォーターのはじめにガツンとやられてしまった反省点を活かすことができたと思います」
最後はディフェンスリバウンドをもぎ取った馬瓜エブリンが、ラストチャンスに向かって攻め上がる。残り11秒に逆転3ポイントシュートを決め、吠える馬瓜が81-80で逆転勝利へ導いた。
皇后杯では2年連続準決勝で敗れ、銀メダルに終わった年は7回を数える。8度目の挑戦でENEOSを乗り越え、新しい景色が見られた。トヨタ自動車で優勝経験ある馬瓜の加入も、チームを大きく変えている。この試合でも、前向きな言葉で発破をかけていた。「ダンさん(馬瓜のコートネーム)から戦うエネルギーがすごく出ているので、自分もついていこうと自然に思えます。ダンさんが下を向かせないように声をかけてくれることで、チームも自分も、もう1回やってやろうという気持ちになるのでいつも力をもらっています」と木村が言うポジティブな馬瓜効果により、ついにデンソーの歴史が塗り替えられた。