数年前までENEOSに太刀打ちできるチームがなかなか現れなかったところから、トヨタ自動車がリーグ戦でその牙城を崩し、今度はデンソーが皇后杯でチャンピオンの称号を得るに至った。Wリーグの群雄割拠感が増していく中、これまでは強豪の一角でありながら挑戦者でしかなかったデンソーも、今回の優勝をきっかけに常勝チームの風格を備えていくことが期待される。長い間積み上げてきた分、それに比例する自信やプライドもデンソーにはあると篠原は自負している。
「過剰に自信を持つことはないですけど、自分たちは優勝するだけの練習や取り組みをしてきたので、優勝に値するチームだと思ってますし、それは(ヴラディミール・ヴクサノヴィッチ)ヘッドコーチも常々言ってくれてるので、良い意味で自信を持ってプレーするというところにつなげていきたいですね」
デンソーはどうしても髙田や馬瓜、赤穂ひまわりが注目される。彼女たちに東京オリンピック銀メダリストという肩書がある以上、それは当然のことでもあるが、篠原も今シーズンはスターターでの出場が多く、デンソーにとっては不可欠の存在。しかし、本人はスターターへのこだわりはなく、チームのためにプレーすることを第一にしている。
「私はスタートであろうがなかろうが、やることは変わらないと思ってます。出たときにどれだけオフェンスでもディフェンスでもエナジー高く戦えるかというのが重要だし、自分でも心がけていることなので、今回の皇后杯はスタートで出ましたけど、そんなに意識はしてないです」
とはいえ、篠原自身も「出だしはすごく大事で、チームに勢いをもたらすという部分は、スタートで出るときにちょっと強く思うところではあるかな」と言うように、やはりスターターとしての責任は大きく、その分貢献度も高い。優勝したことで、チームに貢献している実感はより強く感じられる部分でもあるはずだが、篠原は「そうですねぇ……少し感じたということにしておきます(笑)」と決して自分を見失わない。
「自分は目立つプレーヤーだと思ってないので、自分のやるべきことをやるというのが自分のスタイルで、高いエナジーで戦うというのが自分にとって一番大事なことですし、今はただチームで優勝をつかめたというのが嬉しいです」
冒頭で書いた通り、デンソーはWリーグ優勝に関しては未経験。まずはその目標に向かい、チーム一丸で白星を積み重ねていくことに、篠原は意識を傾ける。あくまでもチームとしての視点で語るところが、謙虚で献身的な篠原らしい部分。こういう名脇役がいることは、年々選手層が厚くなっているデンソーにとっても心強いに違いない。
「今シーズン2冠を目指せるのは私たちだけなので、そこをチームとして成し遂げたいです。レギュラーシーズンもまだ残ってますし、1戦1戦チーム全員で40分間戦っていければと思ってます」
文・写真 吉川哲彦