皇后杯でようやく頂点に辿り着いたデンソーアイリスは、Wリーグでも初制覇の期待がかかる。皇后杯ファイナルラウンドの翌週に再開されたWリーグ第8週は、皇后杯で3試合を戦った疲れがあったのか、やや得点が伸びなかった印象もあるが、ディフェンスでは東京羽田ヴィッキーズを抑え込んで連勝。そして、年が明けた第9週のプレステージ・インターナショナル アランマーレとの第1戦は25点差をつける快勝を収めた。
着実に点差を広げる理想的な試合運びだったように見えたが、篠原華実によれば、チームとしては満点の出来とは言えなかったようだ。常に上位争いを演じるデンソーにとっては、わずかな綻びも放置するわけにはいかないということだろう。
「40分間を通して自分たちのバスケットをするというのがチームとしてやるべきことで、どうしてもそれができない時間帯が今日の後半は特にありました。ディフェンス面でボールストップを特に意識している中で、相手のガードに簡単にボールを運ばれてしまったり、ファストブレイクを出されたりという場面が後半は多かったです。ボールマンをマークしてる人ももう少し頑張らないといけないし、周りもヘルプしていかないと、相手に勢いをつけてしまうので」
この試合が行われた1月4日は、皇后杯決勝から18日後。初めての経験となるとその直後は実感が湧かず、ある程度の時間が経ってから強い実感を抱くというのはよくあることだが、篠原は「たくさんの方から、会う度に『おめでとう』と言ってもらえるので、それはすごく嬉しいですし、それで実感する部分はある」と言いつつ「次はリーグ優勝というところにもう向かってるので、あまり浸りすぎないように」と、勝って兜の緒を締めている。皇后杯決勝の5日後にリーグ戦が再開したことが、気持ちの切り替えを早くさせたという側面も多少なりともあったかもしれないが、初優勝の感慨で立ち止まることなく歩みを進めているのは、常に向上心を持ち続けるアスリートの鑑と言っていい。
皇后杯優勝に関しては、デンソー一筋の髙田真希が在籍16シーズン目で初めて勝ち取ったという事実が、本人の言葉とともに大きく取り上げられたが、チーム自体が初めての日本一であり、選手でも過去に経験があるのは馬瓜エブリンだけ。もちろん、聖カタリナ学園高から入団して9シーズン目の篠原にとっても初めてのことだが、皇后杯初優勝の喜びについて改めて問うと、篠原はこう語った。
「『リツさん(髙田)に比べたら9年目なんて全然』って思いますけど、優勝ってこんなに嬉しいんや、幸せなんやって思いましたし、対戦相手とか自分たちの状況も前の年と同じシチュエーションだったので、準優勝と優勝の差がよりハッキリして、見る景色が全く違いました。
優勝したときに、今までデンソーに関わってきた選手やOGの方、応援してくれた方が浮かんできたので、デンソーの61年の歴史に関わってきた全ての人と一緒につかんだという感じがあって、優勝以外にも得たもの、感じたものがすごくあったので、良い優勝になったなと思います。自分が9年かかったというのはあまり感じてないですね」