チームの勝利を第一に考えてプレーしているという石牧は、プレーそのもの以外の部分でもチームに対して影響力があるようだ。昨シーズン最年長としてキャプテンを務めた白崎も当時26歳と若かったが、今シーズンは1997年生まれで26歳の吉田沙織と鎌田有芽が最年長。石牧とは3学年しか離れておらず、世代の近い選手だけで構成されているということが、石牧にとっても良い環境となっている。
「もともとそういう性格なのかどうかわからないんですけど、つい声を出しちゃうというか(笑)、先輩でも関係なく『ここをこうしてください』って言うようにはしてます。同期も多いのはやりやすいですし、先輩もそんなに年の差がなくて意見を言いやすいというのは、イーグレッツの良いところだと思います。良い意味で上下関係がないというか、そういう環境を作ってくださる先輩がいるのはありがたいです」
今の石牧は良い意味で周囲に気を遣うことなく、のびのびとプレーできている。そんな中、チームの得点源としての自覚も増し、あらゆる面でチームに貢献したいという意識が高まっているところだ。
「リーグが始まった頃はなかなか調子が上がってこなくてダメだったんですけど、最近はだんだん自信がついてきているので、チームの雰囲気が沈まないように自分が率先して攻めたり、声でも盛り上げられたらいいなと思います」
ご存じの通り、姫路は地域型のクラブとして活動している。選手は皆仕事をしながらバスケットに打ち込んでいるが、良い環境とは言えない中でも地域との結びつきが感じられることは、「地域の子どもたちとかその保護者の皆さんもそうですし、会社の人も応援に来てくれて、水色のTシャツも買ってくださるので、ホームゲームの応援は力になりますし、本当にパワーが出ます」と石牧にとってプラスに働いている。ただ、地元のローカルメディアから取材を受けることは「まだ全然慣れないです。インタビューに答えても、自分で何を言ってるかわかんないです(笑)」とのこと。ルーキーらしく、当面の最大の課題はその点なのだろう。既にチームの中軸を担っている立場である以上、今後増えるであろう取材対応や地元のファンとの交流には少しでも早く慣れなければならず、その点は先輩から学ぶ必要がある。
「チームのみんなは明るいですし、ファンの方とのコミュニケーションも上手くて、自分も見習わないといけないなと思います。そういう面でも、イーグレッツをもっとアピールしていけるようにしたいです」
ENEOSとの第2戦では今シーズン最少の4得点に封じられ、チームも大敗を喫した。それだけENEOSにも警戒されたという証拠であるとともに、まだ成長の余地があるということでもある。浜松開誠館高でウインターカップベスト8、愛知学泉大でインカレ3位という結果を残し、アンダーカテゴリー日本代表としてもプレーしてきた石牧が、選手としてここからさらに凄みを増し、姫路に多くの白星をもたらすことを期待したい。
文・写真 吉川哲彦