注目の絈野夏海、紅白戦でも片鱗を見せる
女子日本代表候補の注目選手に絈野夏海がいる。
岐阜女子高校の3年生。脚光を浴びることになったのは、ウインターカップ2023の準々決勝、桜花学園戦だろう。第4クォーターだけで7本の3ポイントシュートを沈め、チームの逆転勝利を呼び込んでいる。最終的に大会史上最多となる31本の3ポイントシュートを決めたことも拍車をかけた。
女子日本代表を率いる恩塚亨ヘッドコーチは、しかし、単に確率のよいシューターというだけでは、オリンピックの出場権がかかった大事な試合に彼女を呼ばなかっただろうと言っている。
「女子では少ないプルアップで3ポイントシュートが打てるところと、ステップバックで3ポイントシュートが打てるところ。それが特別な技術であり、特別な能力だと思ったので、試してみたいと思いました」
それだけでなく、オンボールスクリーンのハンドラーにもなれることも彼女の強みだと認めている。
才能の片鱗は1月14日におこなわれた「WリーグSUPERGAMES~To the World~」内でおこなわれた女子日本代表候補選手による紅白戦でも発揮された。
クイックモーションで放たれる3ポイントシュートをコーナーから沈めると、ハンドラーとしても怯むことなく、ゴールにアタックしてみせたのである。
大人ぶるのはまだ先でいい
そんな絈野の姿を実況席から見ていた3人の選手がいる。
都野七海(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)と横山智那美(トヨタ自動車アンテロープス)、そして森岡ほのか(日立ハイテククーガーズ)である。
絈野の1学年上である彼女たちもまたウインターカップを ── といっても1年前のウインターカップ2022だが ── 沸かせた選手たちである。
そんな彼女たちだからこそ、どうしても聞いてみたかった。1学年下の、いわば後輩が、高校生でありながら日本代表候補に選ばれたことをどう思っているのかと。
もちろんポジションは異なる。その違いは大きい。
しかも彼女たちはいずれもポイントガードである。ベテランを加えても、女子日本代表のなかでは最も争いが激しいポジションと言っていい。高卒1年目、19歳の彼女たちが簡単に割って入れる場所ではない。
それでもなお、3人が揃って、将来の夢を「日本代表として世界で戦える選手になること」と挙げているのだから、19歳の思いを聞いてみたかった。
口火を切ったのは都野である。
「普通にめっちゃ悔しいです。自分ができない体験を後輩の絈野さんができているので、すごく負けたくないって気持ちが強いです」
すると森岡、横山の順で続く。
「悔しいですけど、高校生なのに(日本代表候補の)先輩方の中に入って頑張っている姿すごいなって思うこともあります」
「1つ下でもウインターカップで大活躍をして呼ばれたので、そこは自分もしっかり認めて、でもやっぱそういう経験を先にしているからって(気持ちで)引くのではなくて、自分たちもいろんな経験をさせてもらっているので、そこは強く、負けない気持ちでいます」
正直に言えば、その言葉を待っていたところはある。
悔しい。
負けたくない。
周囲を気遣ったり、平静を装って「ポジションが違うから気にしない」、「自分は自分のことをするだけ」といった大人びた言葉を発するのはまだ先でいい。19歳の、本気で世界と戦おうとしている選手であればこそ、口調は丁寧でも、熱い思いを隠すことなく滾らせているほうが魅力的である。