小さい頃から憧れていた選手と対面して感じたオーラ
森口にとって、吉田亜沙美は「小さい頃から憧れていた選手」という。アイシンに入団し、はじめて対面して感じたのは、「オーラがすごかったです」と顔を赤らめる。
「リュウさん(※吉田のコートネーム)からしっかりパスの出し方やボールさばき、その中でもシュートを狙っていく姿勢を盗みたいです。近くで見られる人は少ないじゃないですか。だから、しっかりその機会をものにできるようにたくさん学びたいです」
見て学ぶ、技を盗む。職人のような口ぶりの森口だが、ベンチでは隣同士に座る。その姿を見ていたら、お互いにずーっとコートに視線を送るだけ。憧れの存在に話しかけることも、そちらを向くこともなかった。まだまだそのオーラに怯むとともに、「自分の性格的にもちょっと難しい部分があるので…」という森口。新人インカレで見たその姿も、ボールを持ったら誰よりも積極的にゴールを狙うが、まわりに声をかけることに関しては非常に消極的だった。「そこも自分の課題なので、殻を破っていろんな人とコミュニケーションを取って、チームに早く馴染めるようにしていきたいです」と分かってはいる。
明るい先輩たちから「アカネ!」と頻繁に声をかけられ、試合中も「飯島(早紀)選手から空いたら思いっきり打って良いから、と言われたので、シュートを打ちやすかったです」という声がけが緊張をほぐしてくれた。ポイントガードの教科書のようなスーパースターの下で、森口がどう成長して行くかが楽しみであり、殻を破ることでその速度もきっと速まるはずだ。
「今までは自分が点数を獲らなければいけない感じでしたが、アイシンには自分よりも全然上手で、点数が獲れる選手も多くいるので、まわりを生かすプレーをこれから身につけていかなければいけないと思っています。自分の持ち味である3ポイントシュートを、チームがしんどいときに助けられる3ポイントを決められるようにがんばるので、そこをファンの皆さんには見てほしいです」
昨年末、つい5日前(※1月2日時点)にウインターカップで連覇を果たした高校チャンピオンの京都精華学園出身、ディマロ ジェシカ ワリエビモ エレもトヨタ紡織の一員としてデビューし、24点、8リバウンドと大活躍。チームメイトだった堀内桜花はシャンソン化粧品シャンソンVマジックに入団し、翌日の12月29日に早くもコートに立っている。ウインターカップやインカレを盛り上げたアーリーエントリーたちの成長を、Wリーグでも引き続き見守っていける。
同じく東海大学九州からアイシン入りした大舘は体調不良により、デビュー戦はお預けとなった。大舘とスタメンでコートに立った #20 山口奈々花はともに石川県出身。元日から大きな揺れが続く令和6年能登半島地震の震源地であり、ご家族は避難生活を強いられているそうだ。梅嵜ヘッドコーチは「メンタルが少しやられてしまっている」と明かしたが、それも無理はない。対戦したトヨタ紡織の坂本美樹をはじめ、Wリーグには10人と多くの石川県出身者を誇る。選手たちには地元を勇気づけるために奮起してもらいたいが、安心してバスケに集中できるように1日も早い平時が戻るのを祈るのみである。
文・写真 泉誠一