繰り返しになるが、デンソーがENEOSに33点もの大差をつけたという事実は、失礼ながらデンソーの強さが想像以上のものだったことを示す。「相手のことは意識せずに、自分たちのやることをやれば絶対大丈夫とみんなで言ってました。みんなが自信を持って自分の役割を認識して、コートで体現できたというのが、リーグ戦を通してできている」と髙田が証言するように、チーム全体に自信が漲っていたのだろう。それでも、傍から見れば予想を超える圧勝劇だったことも確かだ。少し前までは “一強” と言われ、昨シーズンのリーグ女王返り咲きで復権かと思われたENEOSを圧倒したことを、当の本人たちはどう受け止めているのか。
「ENEOSさんは40分間、本当に細かいところまで徹底してやってくる。ちょっとのルーズボール、ちょっとのリバウンドを取れなかったときに一気に勢いを持っていかれるから、自分たちは40分間切らさないこと。プレーもそうですけど、みんなを鼓舞し続けるところで表現できたから、今日の結果があるんじゃないかと思います」(馬瓜)
「この舞台もそうですけどリーグ戦も負け続けたので、率直に嬉しいです。ただ、ENEOSさんがいたからこそ、自分たちがそれを乗り越えるためにはどうしたらいいかと思ってやってきて成長できたので、そこは感謝する部分もありますし、リスペクトする部分もすごく大きいです」(髙田)
「今までは、競った試合になっても、たとえ残り3分で15点差をつけてても最後に負けてたので、『最後の最後まで気を抜かない』と思ってプレーして、今回やっと勝てて本当に嬉しいです」(赤穂ひまわり)
3人のコメントから窺えるのは、40分間戦い続けることができたのも相手がENEOSだったからであり、明確なターゲットがあったことがデンソーの道標となったということだ。しかしながら、デンソーが獲ったタイトルはまだ1つ目にすぎない。優勝インタビューで「こうして一番になったからといって、チャレンジャーであることは変わりません」と馬瓜が言えば、髙田も「悔しい思いをたくさんしてきたチームなので、こういう経験をして殻を破れたのかなと思いますけど、これに満足することなく、今日の試合の課題もあるので、それをしっかり持ってリーグ戦を戦い抜きたいと思います」と気を引き締めた。
今シーズンのWリーグも、ここから佳境に差しかかっていく。デンソーはENEOS戦に加え、馬瓜の古巣であり、現在開幕から14戦無敗のトヨタ自動車との対戦も残されている。対戦はいずれもレギュラーシーズン最終盤の3月。頂点に立つ喜びを知ったデンソーは、ここからもう一つ殻を破ることができるのか。その答えがわかるのは、もう少し先のことだ。
文・写真 吉川哲彦