大手菓子メーカーの株式会社湖池屋が主催する小学3~6年生対象のバスケットボール教室が、昨年に続いて今年も東京・板橋の小豆沢体育館で開催された。元5人制日本代表の中川聴乃氏がメインコーチを務め、クリニックとトークセッションが行われた点も昨年同様。そしてこれも昨年と同じく、湖池屋がスポンサーとなっているWリーグ・東京羽田ヴィッキーズが全面協力し、ヴィッキーズアカデミーの大窪燿平・田代桐花両コーチがサポート役として派遣された。この2人もまた、昨年に続いての参加だ。
3時間弱に及ぶクリニックの間、特に田代が子どもたちと笑顔で接していた姿は印象的だった。「そのほうが心を開いてくれるし、子どもたちも『喋ってもいいんだ』と思ってくれるので、基本的に自分から話しかけに行くようにしてます」という田代は、子どもたちの所へ積極的に歩み寄っていった。
「コーチとしてはワーって元気良くやってくれるほうがやりやすいんですけど、最初はやっぱり緊張してたのか、静かというかおとなしかったですね。でも、じゃんけんのあたりからみんな本性が出てきて(笑)、だんだん楽しそうになっていったし、最後のゲームでは積極的にボールを追ってくれたので、私自身も楽しくできたなって思います」
現役を退いてまだ1年余りしか経っていない田代だが、引退後すぐにヴィッキーズアカデミーのコーチとなり、若年層の指導には慣れている様子。もちろん初めから上手くできていたわけではないが、同アカデミーでの週1回の指導に加え、単発のクリニックの依頼も月に2、3回こなしているとのことで、コーチとしても急速に成長できているようだ。何より、ヴィッキーズアカデミーには幼稚園児が参加できるクラスもあるということで、心の洗濯にもなっているという。
「自分が当たり前と思ってたことを砕いて言語化して伝えなきゃいけないし、私が教わってきたことを今教えても伝わらなかったりすることがあるので難しいんですけど、1年やってだいぶ慣れてきましたね。バスケットと向き合う初心みたいなものに改めて気づかせてもらってますし、アカデミーに関してはもう癒しですね(笑)」
もともと田代のビジョンの中には、コーチ業という選択肢があったわけではなかった。しかし、アカデミーに携わることになったことで、新たなやり甲斐が見つかった。
「最初は正直、指導というのはピンときてなかったんです。人手が足りないのでアカデミーを手伝うことになったんですけど、それがだんだん楽しくなってきて。子どもたちは可愛いし、子どもたちに教えて『あっ、できた!』っていうのが嬉しくて、現役さながらの感情の振り幅でできるところが、本当に良い仕事だなと思います」
Wリーグのチームの場合、クリニックに招かれて選手・スタッフが出向くのが一般的。事業として若年層の育成に取り組んでいるチームはほぼなく、田代が今の立場にあるのは、プロクラブとしてアカデミー事業を展開する東京羽田に移籍してきたからこそだ。
「前は企業チームに所属していた身だったので、その違いはすごく感じています。企業チームは良いことも多いんですけど、縛りも結構ある。ヴィッキーズは地域に根差して、地域の方に応援してもらうことで、企業じゃできないような、いろんな枠を超えた活動もできるのがすごくありがたいですし、ヴィッキーズは選手を辞めたからもうバイバイではなくて、こうやって関わりを続けてくれる。すごく温かいチームだなって感謝してます」