「昨シーズンも結構試合を見に来てもらったりして、時々連絡ももらってました。そうやって見られてたというのもあるし、ルーカスのバスケットを知ってる分、それをやらなきゃいけないと思います。キャプテンにもなったので、率先してみんなの先頭に立って、練習からしっかりやっていきたいです。ルーカスは試合に出てるときは100%、120%を出せという人なので、自分が練習から常にしっかりやらなきゃいけないなというのを感じてます」
オータムカップまで2カ月弱、シーズン開幕までは約3カ月ある。トヨタ自動車でも最初の頃にうまくいかなかったことを知っているということもあり、河村は一つずつ積み上げていければ良いと考えているようだ。
「昨シーズンは最終順位が7位だったので、いきなり優勝まではいかなくてもベスト4に残る、ファイナルに行くというのを目標にしてます。3×3の代表合宿とかで抜ける選手もいるので、開幕まで不安はあるんですけど、ルーカスも『大丈夫』ってみんなに言ってあげてます。サマーキャンプも昨日と一昨日はあまりゲーム内容が良くなかったんですけど、今日はしどろもどろながらもルーカスのバスケットをやりきろうとしてたんで、練習試合とかも重ねていけば良くなっていくと思います。少しずつ、徐々に馴染ませていけるのを手伝っていきたいと思います」
近年は欠場も少ない河村だが、過去10シーズンの中には全休のシーズンもあるなど、大きな故障にも見舞われてきた。前十字靭帯を3度切り、そのうち1度は内側靭帯も同時に断裂。想像を絶する不運だが、河村は相当なポジティブマインドの持ち主だ。
「1回目がシャンソンのときだったんですけど、三好(南穂、一昨シーズン限りで引退)さんが高校のときに同じケガをしたのを知ってて、治らないケガじゃないというか、時間はかかるけど治るというのがわかってたんで、そんなに深く絶望とかはなかったです。2回目は内側靭帯もやっちゃったからヤバいなと思ったんですけど、リハビリも大きな問題なく復帰できたし、3回目はさすがに『マジか』ってなったんですけど、1回目も2回目も復帰できたからいけるだろうって(笑)」
そして河村は、周囲にケガ人が出たときに「『自分のほうがケガしてるから大丈夫だよ』って言ってます(笑)」と、そんな苦しい経験でさえもある意味武器に変えている。昨シーズンはアウェー遠征の際に、ケガで試合に出られない対戦相手の選手に直筆の手紙を渡して励ましたこともあった。その字が数字を除いて全てひらがなだったのは、河村のユーモアあふれるところ。プレー面での貢献もさることながら、そういった河村の姿勢やキャラクターは、これから厳しい練習を重ねることになるであろうトヨタ紡織の雰囲気を明るくし、前進させる材料になるはずだ。
文・写真 吉川哲彦