デンソー戦を終えた時点で、東京羽田のプレーオフ進出の可能性が消滅。シーズン前半を棒に振った津村は、試合に出られなかった分を残り6試合で取り返したいという意識を強めた。姫路戦を1つ落とし、最終週のアイシン戦も第1戦は敗れてしまったが、3月19日の第2戦は我慢強く戦い、最後を勝利で締めくくった。12得点を挙げた津村は、自身の活躍以上に、大田区総合体育館に集まった1800人以上のファンの前での勝利を喜んだ。
「あのゲームは本当に感動が詰まった日だったなと思います。内容的にもチームとしてやってきたことを最後に出せたんじゃないかと思ったし、あれだけお客さんが来てて、勝ちを届けられたのは嬉しかったです。コロナでイベントもなくて、ファンの皆さんにはずっとお会いできなかったんですけど、最後のお見送りでみんな『ありがとう』って言ってくれて、すごく喜んで帰ってくれて、この人たちのために頑張ろうって改めて思いました。毎回こうやって帰してあげられたらいいんだけどなあ……きっと、負けたときはどよーんとして帰ってるんだろうなって思うと、なるべく勝ちたいです」
ファンの存在がどれほど大きなモチベーションになるかということは、東京羽田の一員となって初めて知った。というよりは、東京羽田でなければそこまで強く感じることはなかったかもしれないとさえ思っている。
「萩原さんも『物好き』って言ってましたけど(笑)、私も『なんでこんなに応援し続けてくれるんだろう』って思います。こんなに負けるし、たまにひどいゲームもするし(笑)。でも、萩原さんはミーティングとか試合前に『ファンの人たちは、あんたたちがどんなに劣勢でも立ち向かう姿を見に来てるんだよ』ってよく言うんですよ。だから、どんなときでも下を向く姿は見せちゃいけないなって、私もそうだけど、ヴィッキーズの選手は全員思ってます。ヴィッキーズにいると、ただバスケするだけじゃないというか、勝てばいいっていうだけじゃないということを学べます。ヴィッキーズに入って本当に良かったです」
最終戦の終了後、全選手とコーチ陣がコート上で挨拶をした際に、「喋るだけでも込み上げちゃう(笑)」という津村は何度も声を詰まらせた。脳裏に去来した様々な想いの中には、チームメートやファンへの感謝と同等か、あるいはそれ以上に家族への感謝もあった。
「手術前に寝たきりみたいになっちゃった時期があって、27歳で情けないんですけど(笑)、家族に来てもらってかなり助けてもらったので、少しは恩返しできたのかなって思います」
これまでに経験したことのなかったシーズンは、「たくさんの人に支えられてこの舞台に立っていることを改めて感じた」シーズンでもあった。11試合しか出ることができなかった分、「今までで一番気合が入ってるかもしれないです」と来シーズンが今から待ち遠しい様子。この経験もおそらく、津村ゆり子はモチベーションにし、自身の進化の材料に変えていくことだろう。
東京羽田ヴィッキーズ #25 津村ゆり子
葛藤と前進、そして感謝の日々
前編 https://bbspirits.com/wleague/w23042401thv/
後編 https://bbspirits.com/wleague/w23042502thv/
文・写真 吉川哲彦