ディフェンディングチャンピオンのトヨタ自動車だが、ファイナルまでの道のりは順風満帆ではなかった。馬瓜ステファニーは「今シーズンがスタートをしてから、ここまで来られたことが正直もう信じられなかったです」と新たなチームとなって挑戦し続けてきた。3連覇にあと一歩届かなかった結果に対し、「自分に足りない経験はこれだったんだな」と、映画スラムダンクの名台詞を引用する。優勝した喜びを知っているからこそ、悔しさはさらに大きい。しかし、それ以上に「経験のあるチームに対してダブルオーバータイムまで戦えたことは、自信にもつながりました。トヨタファンの皆さんに言いたいのは、トヨタの未来は明るいぞ」と明るく締め、チャンピオンへ返り咲く新たなスタートを切った。
馬瓜自身はこれからアメリカに渡り、WNBAニューヨーク・リバティのキャンプへ参加し、ロスター入りを目指す。「プレーオフが一番調子良かったので自信をつけることもできました。最後は負けましたけど、この終わり方だったからこそ、少しは自信を持ってアメリカへ行けると思います。ニューヨークでも、ここで学んだことはすごく大きいですし、日本のバスケットのレベルは本当に高いので、自分も自信を持ってやるだけ」と言い、その活躍を楽しみにしたい。
見ていて楽しかったファイナルは、「もうなんか途中から勝ち負けとかより、もうずっとこの時間が続けばいいじゃないですけど、楽しくなってきちゃって」と馬瓜が言うほど、当事者たちも同じ思いで戦っていた。大神ヘッドコーチもその一人であり、この激闘を見届けた多くの方々の気持ちを代弁してくれた。
「本当にみんなが全力を尽くしたベストゲームだった。トヨタのみんなもENEOSも本当に言葉には表せない、戦術ではない、もう本当にそんな試合だった。あらためてバスケットボールの楽しさを選手が表現してくれた50分。もっと見たいと思っている方もいらっしゃるかもしれないが、選手たちは本当によく戦ってくれた」
素晴らしい戦いを見せてくれた両チームに拍手を贈りたい。神経をすり減らす戦いが終われば、みんなで楽しむ「京王観光 Presents Wリーグオールスター 2022-2023 in 有明」(4月29日、30日)が待っている。
文・写真 泉誠一