京王 Presents Wリーグプレーオフ 2022-2023 ファイナル 第2戦の途中から、このカードをずっと見ていたいと感じていた。日本一を決めるにふさわしい研ぎ澄まされた集中力を見せ、戦い続けた両チーム。1プレー毎に成長する姿をずっと見ていたかった。1勝1敗となって迎えた最終戦は40分間で決着がつかず、5分間の延長戦を2度も行う激闘だった。
約48分コートに立ち続けたENEOSの渡嘉敷来夢は、「長引けば長引くほど、うちが有利かなって正直思っていました」と勝機を見出していた。その言葉どおり、苦しい終盤こそ宮崎早織が走り回り、林咲希が3ポイントシュートを決めた。最後はトヨタ自動車アンテロープスの山本麻衣に対し、渡嘉敷が豪快なブロックで阻止する。「もう、あれで勝ちを確信しましたね」。そのこぼれ球を拾った高田静が速攻を決め、72-64。50分間に及ぶ最終戦を制したENEOSが、4年ぶり17回目(※日本リーグ時代を含めると23回)の頂点に返り咲いた。
4年前には11連覇を成し遂げたENEOSの再起を託された佐久本智ヘッドコーチは、「こんな展開のゲームになるとは思っていなかったので本当にガマン、ガマンの連続だった。それをしっかりと選手たちが耐え、自分たちのプレーを信じて、仲間を信じて、徹底してくれた結果だと思っている。目標としていた2冠を達成できたので、ホッとしている」と肩の荷を下ろすことができた。
「本当に負けず嫌い」と渡嘉敷がいうとおりのメンバーが揃っている。宮崎は「本当に悔しい思いをずっとしてきて、今シーズンこの良い結果が出て本当に良かったです。不安だったものが、もう一気にパーッと晴れてうれしい気持ちでいっぱいです」と4年ぶりに満面の笑顔を見せる。続けて、「スタートだけではなく、途中から出てきた選手たちが流れを持ってきてくれるのがENEOSの強み。本当にベンチメンバーには感謝しています」と成長も見られている。林もチームでつかんだ勝利を強調した。
「50分間、本当に長い試合だったんですけど、ずっとコートの中で選手たちは声をかけ合い、ベンチからも本当にみんなが声を出してくれて、チーム一丸となって戦えた結果だと思います」
ENEOS入団後、優勝未経験の星杏璃や高田静らの活躍が光った。4年目の星は「はじめてリーグ優勝することができ、2冠もはじめて。勝つことがこんなにうれしいんだなと感じました」とようやく歓喜の輪に入ることができた。優勝メンバーの中で唯一、「3連覇できたのは本当に良かったです」とは、トヨタ自動車から移籍してきた長岡萌映子である。「ガマンの時間帯でも相手に突き放されずに、ずっとガマンしてガマンしてチームで戦おうと言い続けていました。ディフェンスなどチームのために何かできることを思いながらずっと戦っていました」と経験を還元し、常勝軍団をふたたび輝かせた。