「もう1回ディフェンスをすれば大丈夫。そこは焦らず冷静に」山本麻衣
「絶対に後悔させない試合をします」とENEOSサンフラワーズの渡嘉敷来夢が宣言したとおり、武蔵野の森総合スポーツプラザにて開催中の京王 Presents Wリーグプレーオフ 2022-2023は見応えたっぷりの戦いが続いている。2018-19シーズンから3戦2先勝方式となったプレーオフだが、これまで第3戦を迎えたことがない。2年前のファイナルで、トヨタ自動車アンテロープスにスウィープされたとき、ケガでコートに立てなかった渡嘉敷にとっては、「本当に後がない状況というのがあまり経験したことがないので…」と言うのも当然である。5戦3先勝時代を遡ってみても、最終戦までもつれ込むのは実に15シーズンぶり。今いる選手たちにとっては、誰もが未知なる戦いとなるファイナル最終戦は、本日4月17日(月)19時ティップオフ。
第1戦は55-47でトヨタ自動車アンテロープスが先手を取り、3連覇に王手をかけた。何度もファイナルに勝ち進んだ経験豊富なENEOSであっても、2年ぶりの舞台に「緊張もあったのかなと思う。しっかりと練習してきたことをゲームで表現できなければ、こういう結果になってしまう」と佐久本智ヘッドコーチは、前半に17点しか取れなかった試合の入りを悔やむ。
2年前のファイナルでは、2分だけコートに立った星杏璃。はじめて先発で出場する大舞台は、「今までに感じたことがないくらいの緊張をしていました」。10得点を挙げたが、「前半は6本のシュートを打って全部外しているので、その外のシュートが入ってこないと中も開かないと思います。今日は中をアジャストされていたので、ガード陣がもう少しやるべきことがあったのではないかと反省しています」と述べ、高さの強みを活かせなかった。
トヨタ自動車の大神雄子ヘッドコーチは、「ディフェンスのチーム」という強みを前面に出したことを勝因に挙げる。けっして楽な戦いではなかった。後半に息を吹き返したENEOSに対し、第4クォーターは6点しか取れず、8分間無得点が続く。その中でも、「まだ慌てるような時間帯ではなかった」とコートに立つ選手たちを信じ、自ら打開することに期待していた大神ヘッドコーチにとってもガマンの戦いだった。
「もし、選手がディフェンスのところで少しでも守り切れなかったり、簡単にプットバックされるようなことがあれば、タイムアウトを取ろうと思っていた。しかし、選手たちがリバウンドにフォーカスして戦ってくれた。リバウンド総数(43:34)でも勝っており、やっぱりディフェンスのチーム。そこを大事にして、明日も同じように強く主張していきたい」
無得点が続く時間帯、ポイントガードの山本麻衣がチームメイトに言い聞かせていたのは、「とりあえずディフェンスをやれば大丈夫だから」である。大神ヘッドコーチの期待通り、山本をはじめとした選手たちがコート内で問題を解決していく。得点が決まらず、ミスもあった苦しい時間帯ではあったが、「もう1回ディフェンスをすれば大丈夫だと思っていたので、そこは焦らず冷静に。最後は川井(麻衣)さんがボールコントロールをしてくれたので、託すところは託して、しっかり役割を果たすことはできたと思います」と勝利をつかんだ。
前半は17点しか取れなかったENEOSだが、逆に後半はトヨタ自動車に17点しか与えていない。4シーズンぶりのファイナル初戦を終えた渡嘉敷は、「少し緊張だったり、なんか恐怖心だったりというのを久しぶりに感じていました。もう明日から失うものはないんだなと思って、気持ちを切り替えていきたいです」と良い意味で吹っ切れて、翌日の第2戦がはじまった。