片山菜々も、石田と同様に昨シーズンは地域リーグでプレーし、金子HCの肝いりで山梨に加わった選手。滋賀銀行で2シーズン目に入り、練習も始まっていた4月に突然オファーがあった。そのきっかけとなったのは、福岡大4年時のインカレで36得点を挙げた試合だ。コロナ禍ということもあって早くに就職先を決めていたものの、インカレでの活躍でWリーグに挑戦したい気持ちが芽生えたという片山にとっては願ってもない話だった。
「金子さんがクィーンビーズに入ってガードを探してたらしく、私のYouTubeの動画を見て声をかけてくれて、『ぜひお願いします』という感じで来させていただきました。その動画がなかったらたぶん来れてなくて、本当にありがたいです」
石田とは異なり、Wリーグは片山にとって未知の世界。実際に体感してみると、もちろんレベルの高さを感じはしたが、ワクワクした気持ちがそれを上回った。
「金子さんのバスケットは人とボールが動き回るバスケットで、特にすごい人がいなくてもできる。その中で自分は飛び抜けて上手いわけじゃなく、脚力とディフェンス力を認めてもらって試合に出させてもらったのかなって思います。開幕前は自信をなくしてたというか、バスケットが難しくてどうしよう、通用するかなっていう不安な部分もあったけど、開き直ってやるしかないと思って、試合が始まってからは本当に楽しい気持ちのほうが勝ちました」
ほどなくしてスターターに定着し、順調に駆け出した片山に試練が訪れる。1月2日の東京羽田ヴィッキーズ戦でケガを負い、翌日から9試合にわたって欠場。残り6試合というタイミングで復帰したが、「1カ月くらいバスケットをやらないというのが初めてで、モチベーションも難しかった」と振り返るように、満足できるパフォーマンスレベルには戻すことができなかった。
しかしながら、長いキャリアでは、あらゆる経験を自分次第でプラスに変えることができる。まだ24歳と若い片山は、これも必要な経験だったと受け止めている。
「いろんなトレーナーさんに見てもらったんですけど、『よくこの体で今までやってたね』って言われるんですよ。それくらい、可動域の狭さとか体の硬さがあった。それを改めて知れたので、2、3年後を見据えると良かったと思ってます」
ケガを負ったことには、もう一つ意味があった。「ヤバかったです。正直、もう走れないかもと思いました」というほどのケガだったことで、「今こうやって試合に出させてもらっているのもありがたいし、走れるだけですごいことだって(笑)、もうそれくらいの気持ちです」とコートに立てる喜びを改めて知ることができたのだ。
Wリーグでの初めてのシーズンを過ごし、「新しいこともいっぱい入ってきて、押しつぶされそうにもなるけど、やっぱりチャレンジしたいし、上を目指したい。もっと時間が欲しいです。もっとバスケットをやりたいです」と目を輝かせる片山は、試合に出られなかった経験もきっとプラスに変えていくはずだ。