B3リーグの場合、新規参入クラブがいきなり上位争いに食い込むことは間々ある。今シーズンでいえば東京ユナイテッドがそれに当てはまり、さかのぼると佐賀バルーナーズやトライフープ岡山もそうだった。昨シーズンの長崎ヴェルカに至っては全てにおいて別格の存在で、もはやB3の枠にとどまっていなかった。
これがWリーグとなると話は変わる。昨シーズンのアランマーレ秋田は2勝22敗で、13チーム中12位。今シーズンは勝率を大きく伸ばしているが、参入初年度はリーグのレベルの高さを思い知らされる結果だった。本来、エクスパンションで加わったチームはこういうスタートになるものだ。
今シーズンの新規参入チーム、姫路イーグレッツは第10週を終えた時点で3勝17敗。昨シーズンの秋田を既に上回っているとはいっても、大差をつけられる試合が多かったことを考えると、やはり産みの苦しみを味わっていると言わざるを得ない。それも、ホームゲームでまだ白星を挙げることができていなかった。
その姫路に、ようやくホーム初勝利の瞬間が訪れた。3月5日のヴィクトリーナ・ウインク体育館、相手は東京羽田ヴィッキーズ。29点差をつけられた前日の敗戦を引きずったのか、鷹のはし公歌に3連続3ポイントを浴びるなど、開始約3分で4-15とスタートダッシュには失敗したが、前線から積極的にプレッシャーをかけるディフェンスで徐々にペースをつかみ、連続9得点を挙げるとその後は接戦の展開。やや点差が離れても射程圏に収め、粘り強く守って点差を縮めていった。
特に貢献度が高かった1人が、ルーキーの山本美空だ。山本は前日までの1試合平均出場時間が7分に満たなかったが、この日は16分13秒コートに立って7得点。前半終了間際には、1点リードで折り返す逆転3ポイントを決めてみせた。
姫路といえば、キャプテンの白崎みなみが得点源として君臨。どのチームも白崎を止めることができず、開幕当初からリーグの得点ランキング1位を走ってきたが、その分チーム全体が白崎に頼ってしまうところもあり、その他の選手の得点力が課題となっていた。もちろんそのことを伊與田好彦ヘッドコーチ以下チームの誰もが理解している中、この試合は白崎以外の選手の積極性が光り、山本の意識も得点に傾いていた。
「いつもは自分じゃなくて周りの人にボールを回して、得点を決めてもらおうとしてきたんですけど、今日はまず自分が攻めて、チャンスがあったらアシストという感じで、『自分が第一』という気持ちを持ってプレーしたらうまくいきました。負けた試合はみなみさんにボールを任せるというのがあって、伊與田さんからも『キャプテン以外の得点が勝つか負けるかを決める』とずっと言われてたんですけど、今日は全員がボールを持って、全員が攻めたのが良かったと思います」
もう1人、チームに勝利を呼び込んだのがアーリーエントリーの遠藤真帆。後半は2ケタ点差をつけた時間帯もあった中、その原動力となったのは遠藤の得点とリバウンドだった。この試合も最終的にリーディングスコアラーは29得点の白崎だったが、それに次ぐのが遠藤。前日は2分21秒しか出場せず、加入後の8試合で合計4得点3リバウンドしか挙げていなかった選手が、いきなり22得点12リバウンドという数字を叩き出したのである。