インタビューは、その数時間前に終了した「FIFAワールドカップ2022・カタール大会」の決勝トーナメント1回戦、日本対クロアチアについてからだった。
史上初のベスト8進出を目指したサッカー日本代表は、PK戦の末、クロアチアに敗れた。
幼いころからさまざまなスポーツに興味を持っている彼女なら、あるいは観ているかもしれない。
さまざまな事象からも学びを得るのが彼女のスタイルである。
そこから本題へと移っていこう。
しかし目論見は見事に外れる。
「いや、ライブでは見てないですね。今朝、結果を知りました。ハイライトなどの映像はよく見ますけど、私は選手のときからルーティンを作るタイプなので、ヘッドコーチになった今も生活リズムを大事にしています。さすがに(食事の)グルテンフリーはやめて、好きなものを食べていますけど、睡眠は相変わらず、しっかりととるようにしていますね」
それでも、本題に入る前に食い下がっておきたかった。
たとえハイライトであったとしても、決着のシーンを観ているのであれば、聞く価値はある。
目標まであと一歩というところで敗れた選手たちに、ヘッドコーチ・大神雄子ならどのような声を掛けるだろうか。
「私が森保(一)監督だったらってことですよね? ここまでの準備をどのようにしてきたかだと思うんですね。選手はどうしても目の前の結果を求めるものです。でも監督はそれまでの“旅路”を大切にして、試合に繋げていく……毎日毎日準備をして、振り返って、チームにとって大事なところを見つけていくものだと思うんですね。私はコーチングをしていく中で『ゴールって本当に一つだけでいいのか』と思っているんです。ゴールが三つ、四つあってもいいんじゃないか。たとえば、そのうちの一つが試合の結果だとすれば、もう一つは人間的成長をどのように求めていくか。そのきっかけも毎日準備していく。さらに踏み込んでいけば、挨拶一つ、いわゆる規律の部分も毎日チームでしっかりやっていくことが、二つ目のゴールに繋がる。そんな、試合結果だけではないゴールがあってもいいと思っているんです。結果に対する責任は監督が取るものだから、サッカー日本代表の選手たちには、みんながやってきたそれまでの準備やモチベーションに対して感謝する言葉を、まずは伝えると思います。あとはもう、チーム全員で一緒に一喜一憂するところまで持ってきたわけですから、選手たちに寄り添って一緒に泣いて、一緒に悔しがって……というふうに接したいなと思います」
熱い。
現役時代さながらの熱を、ヘッドコーチになった今も、彼女は放とうとしている。
インタビュー開始からわずか数分。
ヘッドコーチになっても、大神雄子は大神雄子のままだと思い知らされる。