経験を補う伝統として紡いできたチャンピオンメンタリティー
星とともに、高田静、奥山理々嘉、モハメド ファティマトゥ早野夏は、最後にチャンピオンとなった翌シーズンよりENEOSに入団し、3年を過ごしてきた。開幕戦から先発で起用された5年目の藤本愛瑚も含め、「こういう大舞台ははじめてなので少し緊張もあって、普段のプレーがちょっと出せていなかったです。でも、今日の試合に起用してみて、最後には力を発揮することができていました。明日はゲームの最初からその流れのまま持っていければ良いです」と初戦を終えた後、佐久本ヘッドコーチはコートに立った期待の新戦力を評価する。プレッシャーがかかる中での実戦経験と負けた悔しさをバネに、2戦目にして早くも成長した姿を見せてくれた。
王座奪還へ向け、優勝を勝ち獲った経験のない選手たちの力こそ欠かせない。「優勝経験ある先輩たちが何人もいることで、練習からすごく雰囲気があります。代々先輩たちが築いてきた伝統として伝わり、負けてはいけないチームであることを実感しながら、普段の練習もできています」と星が言うように、日々の練習や生活からチャンピオンメンタリティーを吸収し、経験不足を補っていた。
「練習でマッチアップしているのが、宮崎(早織)さんという日本代表選手。ユラさん(※宮崎のコートネーム)よりも速い人はいないと思っているので、その選手とマッチアップする中でディフェンスできたり、オフェンスでも攻められたりできれば、怖いものはないと思っています」という星だけではなく、練習から自信をつけられる環境こそがENEOSの強みである。ゆえに、プレータイムさえ与えられれば、すぐに活躍できる選手が揃っている。
渡嘉敷キャプテンは初戦に敗れたあとのチームミーティングで、「今まではポイントで使われている選手も多かったと思うけど、今はそうじゃないんだよ。でも、こればかりは自分たちの気持ちの持ちようだからね」と発破をかけた。その言葉に後押しされるように、チャンスをもらった選手たちがプレッシャーを乗り越えて輝きはじめた。「この勝利は必ずチームにとってプラスになります。次につなげて欲しいですし、つなげなければいけないことも分かっています」という渡嘉敷キャプテンが、優勝へ向かってチームを引き上げて行く。
ENEOSからトヨタ自動車へ移籍した梅沢カディシャ樹奈は2戦目に21点、13リバウンドのダブルダブルを記録し、新天地で躍動する。逆に、ENEOSに来た長岡萌映子は消化不良だった初戦を終えたあと、「もうちょっと得点に絡んでも良いかな」と自分に言い聞かせるようなコメントを残していた。試合中に笑顔も見られた2戦目は8点をマークし、これからである。ルーキーながら先発で起用された佐藤由佳も、インパクトを残していた。
「未来は、私たちがつくる。」
週末には、残る12チームも各地で開幕を迎える。チャンスを得た経験浅い選手や若い選手が台頭し、ベテランも負けずに1年毎に磨きをかける。切磋琢磨しながらレベルアップするWリーグにおいて、誰が未来をつくるのか ── 楽しみである。
文・写真 泉誠一