続いて、東京羽田・津村ゆり子。こちらは千葉とは対照的に、マスクをつけていてもわかるほどの満面の笑みで取材エリアに姿を現した。この日の試合は接戦の末にアイシンに敗れたが、津村は終始ひたむきにプレーする中でもバスケットを楽しんでいるように見えた。昨シーズンはこれまでで最も成長したという実感が本人にもあり、笑顔はそれを経た今の充実感の表れなのかもしれない。
「昨シーズンの1年間は練習から気持ちを入れて頑張ったなと、自分でも思います。自分の強みを生かしてもらいましたし、自分自身は悪いときもあるけどバスケットはチームスポーツだし、『まぁいいや』って良い意味で開き直れたと思います」
この津村の言葉の中で、「練習から」という部分は非常に重要なポイントだ。一昨シーズンまではただがむしゃらにプレーしていた印象があったが、昨シーズンは状況を見極める冷静さも垣間見られた。それも、「そういう練習を積み重ねて、練習で起こることが試合でも起こるから対応できた」という日々の蓄積がもたらしたものだった。来たるシーズンに向けて準備が進む中、萩原美樹子ヘッドコーチが導入した5アウトのオフェンスシステムにも、津村はチームの躍進の可能性を見出している。
「サイズは小さくなったんですけど、このメンバーだからこそできるバスケットもあると思います。バスケ人生で5アウトは初めてなので、まだわからない部分もあるんですけど、機動力を出していこうというのは自分にも、このメンバーにも合っている。この3カ月くらいで積み上げてきて形になってきていて、開幕までにもうちょっと成長できると思っています」
チームが目指すのはもちろんプレーオフ進出。チーム・個人両面で昨シーズン得た自信にさらなる上積みができる、そんな感触がある津村の口ぶりは非常に強かった。
「今シーズンこそはという想いはチームのみんなにあるので、必ず達成したいです。昨シーズンはデンソー戦2戦目のようなゲームができるという手応えがあったし、そういうゲームをどれだけ増やしていけるかだと思います。個人としては、この1年間で積み上げたものをブラッシュアップして、得点もアシストもオフェンスリバウンドも全部やって、オールラウンダーを目指して頑張りたいです」
表彰記事でも触れたように、今シーズンは大田区総合体育館で12試合のホームゲームがあり、他会場でも2試合開催予定。このことは、「羽田のファンが一番熱いと思っていますし、ホームゲームで勝つところを多く見せたい気持ちが強いです」と津村にとって相当なモチベーションになっている。筆者がインタビューした約6分間、ただの1秒も絶やさなかった笑顔をホームゲームでも見たいものだ。
BBS AWARD 2021-22
【ベストトランスファー・Wリーグ】千葉歩(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)
https://bbspirits.com/wleague/aw22062802/
【MIP・Wリーグ】津村ゆり子(東京羽田ヴィッキーズ)
https://bbspirits.com/wleague/aw22063001/
文 吉川哲彦
写真 W LEAGUE