「一人ひとり努力する選手が多いので、まだまだ成長できる」馬瓜ステファニー
東京オリンピックでオールスター・ファイブに選ばれた町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)は、世界No.1ポイントガードである。ファイナルではその町田とマッチアップし、チームを勝利に導いた山本のコメントからも自信がうかがえる。
「町田選手から全てのプレーが富士通ははじまると思っていました。昨日(第1戦)は自分のマッチアップが遅くて、自由に速攻を出されてしまった部分が多かったです。でも、今日(第2戦)は川井(麻衣)選手と交代しながらマークし、前からがんばって当たっていこうと話していました。スピードがあって、プレッシャーをかけるのも難しいですが、その中で今日できることをやりました」
桜花学園高校時代から山本とコンビを組む馬瓜との息の合ったプレーも、洗練されてきた。「今日が最後だという気持ちで一人ひとりが戦っていたので、それがコートに出て、ベンチからもみんなが声がけをしてくれて、楽しいゲームでした」という馬瓜は、試合中もいろんな表情や感情を見せてくれる。今シーズンは優勝に貢献する活躍を見せた馬瓜だが、「一人ひとり努力する選手が多いので、まだまだ成長できると思っています」とさらなる高みを見据えていた。
トム・ホーバス前女子日本代表ヘッドコーチ(現男子日本代表ヘッドコーチ)は、「女子バスケはどんどん良い選手が出てくる」と誇らしげに語っていたのも納得である。多くの選手が高校卒業後にWリーグで揉まれ、2〜3年経ってもまだ20歳を過ぎたばかりなので、若い選手が台頭しやすい。また、大学4年間でもしっかりと強化されており、ルーキー・オブ・ザ・イヤーには拓殖大学出身の𠮷田舞衣が受賞した。次点には白鷗大学出身のシラと筑波大学出身の佐藤由璃果(シャンソン)が選考され、それぞれチームで活躍していることこそが、その証である。
頂点に立つのは、常に1チームしかいない。ファイナルで敗れた富士通だが、はじめて大舞台のコートに立った選手も多く、岡田英里や藤本愛妃ら若手がこの経験と悔しさを糧に爆発的な成長に期待が高まる。ENEOSも奥山理々嘉や藤本愛瑚 、星杏璃、東京オリンピックに出場したデンソー アイリスの赤穂ひまわりやトヨタ紡織サンシャインラビッツの東藤なな子など現在23歳以下の有望な選手たちの名前を挙げればキリがない。さらに、まだ経験浅い大学出身の選手たちの活躍も見逃せず、頼もしい「下の子たち」がWリーグを世界屈指のリーグへと押し上げている。来シーズンの新たなシンデレラ誕生が楽しみである。
文・写真 泉誠一