「もう一回強くなれる」渡嘉敷来夢
優勝に返り咲くことができなかったENEOSだが、ケガの功名として奥山理々嘉や高田静がスタメンで起用され、星杏璃など若き逸材が大きな成長を遂げたシーズンとなった。敗れた後のロッカールームで渡嘉敷は、「去年はこの舞台に立てなかった選手も多かったが、今年はしっかり試合に出ることができた。良かったことも悪かったことも明確になったので、しっかり休んで次のシーズンへ向けてまた走り出そう」とその成長が実感できたからこそ、背中を押した。
昨シーズンはケガによりベンチから鼓舞することしかできなかった。復帰を遂げた今シーズンだったが、これまで16年連続でファイナル進出を果たしてきたENEOSであり、渡嘉敷にとってははじめてセミファイナルで敗れる屈辱を味わった。「正直、本当に悔しいです。他のチームはいつもこういう気持ちを味わっていたんだな」と実感し、後輩たちへ向けた言葉も自分を奮い立たせるものだったのかもしれない。
「ここで落ち込んでも仕方ないと思っています。引退のシーズンじゃなくて良かったというのが正直な気持ちです。また必ずこの舞台に帰って来たいですし、次は必ずファイナルのコートにチーム全員で立って、そこで去年と一昨年の経験があったからこそ、今感じているこの悔しさや優勝の大切さをもう一回感じることができると思っています。『もう一回、強くなれる』と前向きに考え、それをしっかり若い選手にも伝えていきたいです。それぞれの振り幅は違いますが、若い選手たちはしっかり成長しています。それに負けないように引っ張りながら、自分自身も成長していきたいです」
スーパースターであっても、スポーツにおいては挫折がつきまとうものだ。それを乗り越えたからこそ、スーパースターと呼ばれる存在になれる。渡嘉敷もENEOSも、11連覇している期間が順風満帆だったかといえば、けっしてそうではなかったはずだ。頂点にたどり着けなかったからこそ、恐ろしいENEOSの新たな殻が破られたような気がしてならない。
文・写真 泉誠一