富士通を成長させた優勝を知る移籍組
Wリーグ史上初の11連覇を成し遂げたENEOSサンフラワーズだが、昨シーズンはファイナルで敗れ、トヨタ自動車アンテロープスにその座を明け渡した。リベンジに燃える今シーズン、気がつけばレギュラーシーズン1位で「Denka Presents Wリーグプレーオフ 2021-2022」へ進出し、セミファイナルより初陣を迎える。クォーターファイナルを勝ち上がってきた5位・富士通レッドウェーブとの第1戦は、58-67で初戦を落としてしまう。後がなくなったENEOSは気負いすぎてシュートが決まらず、最初の10分間でたった4点しか取れなかった。ENEOSは3ポイントシュートに長けた林咲希と岡本彩也花をケガで欠き、追いかける戦いは厳しい状況でもあった。佐藤清美ヘッドコーチはひと言、「第1クォーターが全てだった」と敗因を述べたENEOSは53-61で2連敗を喫し、早々に姿を消した。
第1クォーターを終えた時点で4-19。15点のビハインドを背負いながらも、「最後まで全員で踏ん張ることができたのは、次につながるのかな」と渡嘉敷来夢は気丈に振る舞う。前半はその渡嘉敷がリバウンドをねじ込みブザービーターを決め、22-32と10点差まで追い上げる。立ち上がりから流れをつかんだ富士通だったが、BTテーブスヘッドコーチ曰く、「第2クォーターだけで7本のターンオーバーがあり、せっかく作った良い流れが消えてしまった」ことで、リードしているにも関わらず落ち着かないプレーが続いた。結果が全てのプレーオフであり、「勝てて良かった」と指揮官は安堵し、富士通は6年ぶりにファイナルへのチケットを手に入れた。
第1戦のリバウンド数は、44:35でENEOSが上回る。しかし、第2戦はオコエ桃仁花が10本、また要所で内尾聡菜がリバウンドを奪って相手のチャンスを潰していった。テーブスヘッドコーチは「ENEOSに対してリバウンドで勝つという目標はなく、大きく差をつけられないように、それぞれの選手がリバウンドに参加しなければならない。今シーズンはそこも成長が見られた」と及第点を与えた。
渡嘉敷と梅沢カディシャ樹奈のツインタワーの長所も、ENEOSから移籍してきた宮澤夕貴と中村優花が上手く消すディフェンスを見せる。試合中も宮澤は「タクさん(※渡嘉敷のコートネーム)のドライブが速いから」などと常に注意を促し、チームディフェンスで高さに対抗していく。テーブスヘッドコーチが評価したリバウンドに対しても、「技術ではなく、彼女たちが練習中から積極的にリバウンドへ行くから、まわりも良い刺激になっている。背中を見せる人などいろんなタイプのリーダーシップがあるが、今シーズンは彼女らの加入によりしっかりと口で伝える選手が増えたことも大きい」と移籍してきた二人がチームを成長させていた。
町田瑠唯も、「相手に少し押され気味になったときや、流れをつかめていないときにチームを鼓舞するような言葉を試合中でも2人が積極的にかけてくれています。特に若い選手たちはすごく助けられていると思います」とその利点を挙げた。町田と篠崎澪は2015年から2年連続ファイナルを経験しており、宮澤と中村をはじめとした選手それぞれが培ってきたものを結集させ、2008年以来13年ぶりの日本一を目指す。