レギュラーシーズンが終わりを迎えようとしている今シーズンのWリーグは、国際試合に伴う中断期間に加え、新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、各チームの試合消化数がばらついたままシーズンが進んだ。昨シーズンに続いて勝ち点制(勝利:2点、敗戦:1点、不成立:0点)を採用していることで、特にシーズン終盤はその順位も日々変動しているが、昨シーズンまで4シーズン連続最下位の新潟アルビレックスBBラビッツは、現状で13チーム中12位。しかし、最下位のアイシンが2試合を残しており、勝ち点差は2。対戦成績が0勝2敗の新潟は勝ち点で並んでも優位に立つことができず、アイシンが残り2試合ともに不成立、あるいは1試合敗戦かつ1試合不成立とならない限り、順位を逆転されてしまうという厳しい状況だ。
3月15日のトヨタ紡織戦で全日程を終了した新潟は、同18日に大滝和雄ヘッドコーチの契約満了が発表され、一足早く来シーズンに向けた準備に入る。現時点で新HCは発表されておらず、ロスターが固まるのもまだ先の話だが、来シーズン新潟にプラスアルファをもたらしてくれそうな期待がかかる選手を2人ピックアップしたい。
陽本麻優は、浜松開誠館高校が2016年に初のウインターカップベスト8進出を果たしたときのキャプテン。その後奈良学園大に進学し、シュート力を武器に関西リーグ1部で活躍を見せた。新潟にはポイントガードとして入団したが、シーズン序盤は出場機会が少なく、同じくルーキーの河村美侑の戦線離脱以降に宮坂桃菜のバックアップとして台頭。陽本自身も「最初はなかなかプレータイムを貰うことができなくて、短い時間で結果を出さなきゃいけない難しさがあったんですけど、少しずつプレータイムを貰えるようになって、コートの中で表現することもできました」と振り返る。
奈良学園大といえば、これまでに何人かはWリーグに進んだ選手もいたものの、目立つ活躍を見せることはできなかった。そんな中で陽本は「高校もそうですけど、やっぱり出身の学校を背負っているので、こうしてプレーしていることを後輩たちに何か伝えられたら」と責任感を持ち、東京オリンピック銀メダリストを筆頭にレベルの高い選手が揃うWリーグの水に慣れようと努める。
「富士通の町田(瑠唯)さんやENEOSの宮崎(早織)さんとマッチアップして、やっぱり自分には当たりの強さとか足りないところがまだまだあると感じました。でも、対戦して身近に感じることができるので、相手の良いところはそうやって対戦しながら吸収していきたいという気持ちでプレーしています」
徐々に出場機会が安定していった中、陽本にとって転機となる試合もあった。1月8日の東京羽田ヴィッキーズ戦で、Wリーグでは初めての2ケタとなる10得点をマーク。それまでは得意な3ポイントシュートに意識が傾いていたが、「この試合からドライブで得点に絡むことができるようになって、何か吹っ切れたというか『自分はできる』というプラスの気持ちが出てきました」とWリーグでも通用する部分があることを自覚したという。スキル面の自信もさることながら、メンタル面のポジティブな変化を感じられたことは、ルーキーにとっては何よりも大きい収穫だ。
そして陽本には、ルーキーながら自身の経験を武器にしようという気概もある。母校の浜松開誠館高は、スターターの5人全員が160センチ台というスモールチームでベスト8まで勝ち進んだ。新潟も、Wリーグの中ではサイズ面の不利を抱えるチーム。格上と呼ばれるチームに対して怯まない気持ちを、新潟でも持ち続けようと意識する。
「浜松開誠館でもベスト8になるまでに、自分たちよりレベルの高いチームと対戦して勝ってきたというのがあったので、レベルの高いチームと対戦するにあたって、勝ちたい気持ちは高校でもWリーグでも同じという想いはあります」
「新潟のプレースタイルは自分が貢献できるスタイルだと思う」とも語る陽本が、立ち向かう姿勢をチームに浸透させることができるか。