3月6日に代々木第二体育館で開催されたWリーグの2試合で、目を覆いたくなる出来事があった。それも、2試合双方でである。まず、トヨタ自動車アンテロープスとデンソーアイリスの対戦でデンソー・近藤楓が負傷。そして、富士通レッドウェーブとENEOSサンフラワーズの試合では最終盤にENEOS・岡本彩也花がコートに倒れ込んだ。後日、近藤は左ひざ、岡本は右ひざをともに前十字靭帯断裂したと発表されている。岡本に関しては、奇しくも昨シーズンの渡嘉敷来夢と全く同じ箇所。試合終了後に一度はコートを後にし、再びコートに戻って観客席に頭を下げてからロッカールームに消えていった渡嘉敷の気丈な振る舞いは、多くの人の心に刻まれたに違いない。
その翌週の3月12日、同じ代々木第二体育館で今度はデンソーとENEOSが顔を合わせた。大ケガを負った2人はもちろん出場できないが、ENEOSベンチには松葉杖を持った岡本の姿があった。その姿に勇気づけられたのだろうか、ENEOSは前半に2点ビハインドを背負う難しい展開から第3クォーターに抜け出して81-72で勝利。この試合は林咲希も欠場したが、代わってスターターに入った奥山理々嘉が3ポイント5本を含む27得点と爆発し、ENEOSの層の厚さも改めて示された格好だ。
その中で、宮崎早織も勝利に大きく貢献した1人と言っていいだろう。14得点6リバウンド6アシスト3スティールとオールラウンドに働いた中でも、特に第3クォーターは最初の2分の間に奥山の3ポイントに結びついたアシストパスや自らの3ポイントでチームを勢いづけた。宮崎はこの試合を以下のように振り返る。
「主力が2人抜けての試合でしたけど、勝ち切ったことが一番重要だったのかなと思います。後半は若い子たちが思い切って打ってくれたシュートが得点につながって、そこからタク(渡嘉敷)さんや自分が細かいところをつないでいけました。エネルギッシュに頑張ろうと言って後半に入れたのが良かったと思います。私自身まだ課題ばっかりなんですけど、3ポイントを決めたりディフェンスを頑張ったり、あとは若い子たちが頑張れないようなところを自分がフォローできればいいかなと思っています」
ENEOSの心の支えと言っても過言ではない岡本が大ケガに見舞われたのは、チーム全体に影を落としかねない出来事。宮崎も「ショックはありました。一番ショックなのはレア(岡本)さんですけど、私もちょっと気持ち的にはしんどかったです」と語ると、その目は瞬く間に潤んでいった。しかし、今はプレーオフに向けてチームの状態を上げていかなければならない時期。宮崎は「優勝したいという想いはすごく強いです。でもやっぱり、今重要なのは一つひとつ勝ち抜いていくこと。大変ではあるんですけど、まずは目の前の試合をしっかり戦っていきたいと思います」と、今視線を向けるべき方向を冷静に見つめている。