自信によって手に入れたしなやかなプレー
笑顔がチャームポイントのオコエだが、少し前までは萎縮し、顔は引きつり、どこか怯えながらプレーしているようだった。昨年の春、東京オリンピックへ向けた選手選考が行われている最中、「せっかくオリンピックに出られるかもしれないチャンスが目の前にあるのに、思いっきりやらなければもったいない」と記者会見で話すオコエはメンタル面から180度切り替えた。その結果、歴史に名を残す12人に選ばれ、夢の舞台に立つことができた。
それまでは、恵まれた強靱な体躯を活かし、ゴリゴリとインサイドへ押し込むプレーが彼女の武器だった。しかし、今では3ポイントシュート、ドライブとバリエーションを増やし、持ち前のポストプレーでも華麗なステップを見せる。プレーの幅が広がった要因として、「特に昨シーズンよりも自信を持ってプレーできることが大きな成長になっています。ここからは精度を上げていきたいです」と、頼もしい言葉が返ってきた。肩の力が抜けたことで繰り出されるしなやかなプレーが、そのままパフォーマンス向上に現れている。思いきってチャレンジし、成功も失敗も全てを自信に変えながらオコエは進化を遂げてきた。
今シーズンが終えれば、すぐさまWNBAワシントン・ミスティクスへ飛び立つ町田瑠唯のためにも、せっかくならば日本一になって送り出したい。それがチームの士気を高めるひとつのきっかけになっているのではないかと、オコエに聞いた。少し首を捻ったあと、「私たちは優勝を目指しているので、そこは変わらずにやっていきたいです」と無難な答えとともに照れ笑い。当の本人である町田も、「あまり器用な方ではないので、一つひとつクリアしていきたい。今はWリーグ、それが終わったらWNBA、それが終わったらまた次を決めて行く感じになりますかね」というのもまた、富士通らしい。数少ない残り試合でなんとか(17勝)3敗をキープしつつ、富士通よりも黒星が少ない相手に勝利し、レギュラーシーズントップ通過を目指すことが、クリアすべき目の前のミッションとなる。
※富士通vsトヨタ自動車の代替試合は3月27日(日)・28日(月)にトッケイセキュリティ平塚総合体育館にて開催
文 泉誠一
写真 W LEAGUE