身長が大きいわけでも、語学に長けているわけでも、野心に溢れているわけでもない。そんな町田がWNBAへ行くことは、他のWリーグ選手たちにも大きな刺激となるはずだ。大神氏も「例えば、同じようなサイズのトヨタ自動車の山本(麻衣)などにとっても身近に感じられる場所になる。身近な選手がどんどん行きたいと思えるような場所になれば良い」と期待している。
WNBAのサバイバルを勝ち抜くためにも活かす日本代表争い
ルーキーとして迎えられるWNBAであり、富士通の丸山茂実部長は「トレーニング契約」と言及した。ワシントンのサイトを見れば、同じくオファーされた韓国代表のカン・イスルは「TRAINING CAMP INVITE」だが、町田の場合は「WELCOME TO THE DISTRICT」とすでに歓迎されている。シーズン前のキャンプでは、次々と選手がカットされていくことを目の当たりにしてきた大神氏は、「毎日がサバイバルだった」と振り返る。しかし、女子日本代表でも同じような経験はできていると大神氏は考える。
「東京オリンピックまでの選考段階でポイントガードは4人おり、安間も含めて切磋琢磨し、トライアウトをしてきています。代表もまたサバイバルとして、ひとつ経験している分、どんなことにも動じないで向かって行って欲しいです。また、英語のところは臆することなく常にコミュニケーションは取って行って欲しいですね」
東京オリンピックの選考から残念ながら漏れた安間志織は今、トヨタ自動車アンテロープスで優勝した後に移籍したドイツ女子ブンデスリーガ(DBBL)のアイスフォーゲルUSCフライブルクの得点源として大活躍中であり、チームも2位につけている。海外生活に対するアドバイスとして大神氏は、先駆者でもある田臥勇太(宇都宮ブレックス)から受け継いだ水煮ツナ缶の持参を勧めていた。
仲間の特徴や住む家の環境を含め、行かなければ分からないことばかりの未知の世界へ足を踏み入れることはやはり挑戦である。だが、トップアスリートにとっては毎シーズン、毎試合、それこそ日々挑戦し続けなければならない。その挑戦が、WリーグもWNBAも変わらぬレベルであって欲しい。
WNBAでの成功をどのように考えているか? という記者の質問に対する町田の答えが、ワクワクを言い表しているようだった。
「いろんな壁があったり、ボコボコにされるかもしれないけど、それも一つの経験。その経験ができることがひとつの成功なのかな」
Wリーグや日本代表と同じプレーを求められているが、これまでとは違い、ワシントンのチームメイトの平均身長は182cm(富士通は174.5cm)。最長身となる196cmのエレーナ・デレ・ダンを筆頭に、190cmオーバーの選手は5人を数える。ポイントガードとして新たな仲間たちにどんなパスを繰り出すのか ── 逆に、彼女たちに活かされた町田が新境地を開く可能性も秘めている。ふたたび“小さなルイ”が世界を魅了する日を、心待ちにしている。
WNBAの開幕は現地5月6日。コロナが終息または落ち着いていればプレーオフに進出し、優勝を争っているであろう我らがウィザーズとWNBAデビュー戦を合わせた“Wルイ応援ツアー”に行きたい!
文 泉誠一
写真 泉誠一・W LEAGUE