もう“挑戦“ではなく“当然“な評価
多くのスポーツにおいて、島国である日本から海を渡ることに対し、“挑戦“と表現され続けている。プロ野球や女子サッカーが世界一に輝いても、“挑戦”の文字はいまだに消えない。もちろん言葉や文化の違いが大きな壁となり、スポーツにおけるマーケットの格差もある。競技自体の実力とは違ったところで評価され、“挑戦”となっている部分は否めない。ワシントン・ミスティクスからオファーを受けた町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)に対する記者会見もまた、『WNBA挑戦に関する』とつけられていた。
女子バスケにおける“挑戦”の2文字には、少し違和感を感じる。一方で、春から初秋にかけて行われるWNBAなので、Wリーグに戻ってまたプレーができるために移籍ともまた違う。アメリカは世界No.1チームであり、WNBAもまた女子プロバスケットボールリーグとして世界一であるのは間違いない。東京オリンピックで日本は世界2位に輝いた。大会ベスト5に選出され、世界No.1ポイントガードとして認められた町田に対し、WNBAチームが白羽の矢を立てたのは当然と言える。また、WNBAは世界一だが、そのサラリーの現状は夢見るような金額ではない。平均年俸は約1400万円と言われ、町田を含めたルーキーなどが保証される最低年俸も約700万円。Wリーグの年俸は公表されていないが、大企業がバックアップする上位チームはWNBAと遜色ないのではないかと想像する。だからこそ、もう“挑戦”ではなく、世界一のリーグで日本人選手がプレーするのは当然だと考える。
これまでWNBAのコートに立った日本人選手は3人。直近はENEOSサンフラワーズの渡嘉敷来夢が、2015〜17年の3シーズンをシアトル・ストームでプレーしたのは記憶に新しい。栄えある第1号はWNBA開幕イヤーとなった1997年、サクラメント・モナークスにドラフト2巡目全体14位で指名された萩原美樹子氏(現東京羽田ヴィッキーズ:ヘッドコーチ)。続いて、大神雄子氏(現トヨタ自動車アンテロープス:アシスタントコーチ)が2008年にフェニックス・マーキュリーでプレーする権利を勝ち獲った。町田のWNBA入りを歓迎する大神氏もまた、日本人選手の価値を尊重する。
「(今回のオファーは)町田選手だけではなく、日本が銀メダルを取った結果に対する評価です。今後も、他の日本人選手に声がかかるかもしれない。WNBAだけではなく、ユーロリーグなどヨーロッパで活躍できる機会が増えるのではないかと期待しています」