タイトルを見て既視感を覚えた方もいるかもしれない。そう、「大田に帰ってきた男」という記事を書いてまだ1カ月しか経っていない。わずか1文字変えただけで、今回も舞台は大田区総合体育館である。たった1カ月の間に似通ったテイストの記事を2本書けてしまうほど、この体育館には様々な人間模様が渦巻いている。
個人の率直な感情にすぎないが、Wリーグが2021-22シーズンのゲームスケジュールを発表したとき、筆者はほくそ笑んだ。1月7、8日に大田区総合体育館で組まれたのは山梨クィーンビーズvsプレステージ・インターナショナル アランマーレ、東京羽田ヴィッキーズvs新潟アルビレックスBBラビッツの2カード。地域型クラブ4チームが一堂に会して火花を散らすこととなったのである。
リーグ側の思惑も感じられたこのカーディングは、アランマーレが今シーズンWリーグに参入したことで実現した。そのアランマーレでキャプテンを務めているのは平松飛鳥。一昨シーズンまで東京羽田でプレーしていた選手であり、今回はかつてのホームに凱旋することとなったわけだ。
7日の試合は金曜日の17時開始だったわりには、多くの観客が大田区総合体育館に足を運んだ。19時から東京羽田の試合があったということもあるが、遠く離れた秋田の地で奮闘する平松を見ようと、早い時間から駆けつけた東京羽田のファンもいたに違いない。8日の試合を終えた後、平松は「ヴィッキーズファンの方々や地元の同級生、家族も見に来てくれて、その中でプレーする姿を見せられたのは嬉しかったし、楽しかったです」とマスク越しでもわかるほど満面に笑みをたたえた。
ただ、チームは山梨に連敗を喫し、これで開幕から白星なしの16連敗。17年ぶりの新規参入チームとして、Wリーグの洗礼を容赦なく浴びせられている。そんな我慢のシーズンを送る中で、平松は数少ないWリーグ経験者として重要な役割を担い、今はその経験をチームに還元しようと努める日々だ。
「リーグ戦が始まる前は言葉でしか言うことができなくて伝わりづらい部分もあったんですけど、リーグ戦が始まってからはみんなが実感してきていて、自分としても今までよりスタンダードが高いんだよっていうところを少しずつチームに落とし込めているんじゃないかと思います」
事実、開幕当初は40点台が多かった得点が、試合を重ねるにつれて増えてきている。その点は感触も良いようで、「自分たちは小さいんですけど、機動力とか1対1でアタックするのはだんだんどの相手にもできるようになってきた手応えがあって、それは自信になっています。開幕の頃と比べて、当たりの激しさも上がってきていると感じます」と平松が語るように、Wリーグのレベルに徐々にアジャストしてきていることは間違いない。この2試合でいずれも2ケタ得点を挙げた砂川夏輝を筆頭にポテンシャルを発揮しつつある選手も多く、リーグのレベルに慣れれば侮れないチームになっていくだろう。