大怪我を乗り越え、「万全の状態」で新天地へ移籍
粟津雪乃は、桜花学園高校卒業後の2017年から計2シーズンをデンソーアイリスで過ごした。けれども、その間コートに立てたのは加入2年目の4試合のみ。
「右膝の前十字を怪我してしまって、気持ちの面でも苦しい2シーズンでした」
怪我に泣いた粟津は、デンソーでの2年間を最後に、もうバスケットを辞めようと思っていた。
引退し、また新たな人生を ── 。そう思っていた矢先、彼女をバスケットの世界に留める存在が現われた。平野実月(トヨタ自動車アンテロープス)だ。
「もう一回、一緒にバスケットをやらない?」
2人は、朝明中学校から6年間チームメイトだった同級生。平野は高校卒業後、愛知学泉大学でプレーしていた。
「デンソーを辞めるタイミングで誘ってくれました。最初はあまり前向きな気持ちになれなかったんですけど、あとからすごく心に響いて……。もう一回、平野と一緒にプレーできるならやりたいと思って、短大(愛知学泉短期大学)に行くことを決めました」
しかし、粟津は進学1年目の11月、またしても「同じところ」を怪我してしまう。インカレを直前に控えた出来事だった。それでも、昨年行われたインカレには間に合い、全5試合で先発出場を果たす。今度は平野のほうが怪我でプレーができなかったものの、「最後に4年生とプレーできたことはすごく良かったですし、デンソーのときと違って『やり切れた』という気持ちもありました」と2年間の大学生活を振り返った。
今季加入した東京羽田は「大きな怪我をしてしまっても声をかけてくださった」と、粟津は感謝の言葉を述べる。179cmの身長はチームで2番目に高く、チームにとっても貴重なパワーフォワードと言えるだろう。
「今は控えメンバーなので、試合に出たときは流れを変えられるようなリバウンドやディフェンスをしっかりやりたい」。
そう意気込む粟津だが、31日のENEOSサンフラワーズ戦ではリハビリ中に練習を重ねた3ポイントシュートも2本沈め、チームトップの13得点もマークした。
「今は万全の状態でプレーできています。平野もそうですけど、紡織(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)にも大学の同期の岡田(真那美)がいたり、デンソーにも仲良くしていただいた先輩もいたりするので、愛知のチームとの対戦は特に楽しみです」
チームはまだ今季の初勝利は掴めていないが、粟津も、先に紹介した中島も、自身2度目のWリーグに喜びを感じながらプレーしている。
これからもこの国内最高の舞台で、思う存分バスケットを楽しんでほしい。
文 小沼克年
写真 W LEAGUE