「李さんにも『考えて』って言われるくらい頭を使うんです。型にはまらないバスケットだから、今までとはバスケットが違います。でも、だから、『こういうのもあるんだ……へぇ、こういうのもあるんだ』って毎日新しい発見がいっぱいあります」
引退を考えたとき、大沼は年齢もその理由に挙げていたが、いくつになっても新しいことを学べるのはワクワクするものだ。大沼もそれを強く実感している。
「今はできることが限られているけど、まずはそれを頑張りたい。欲が出ちゃったりするし、『前の自分だったら、これができるのに』とか、『ここを頑張れるのに』、『ここで走れるのに』とか思うこともあるけど、前と比べないようにして、今できることをやるって心がけています」
宮澤夕貴、長岡萌映子、三好南穂、そして本橋菜子 ── 東京2020オリンピックで銀メダルを獲得した女子日本代表の同級生たちだ。数年前までは大沼も密かにその座を狙っていた。しかしそれが叶わなかった今、彼女はベクトルを自分に向けて、自分の足で新しい道へと歩き出している。
練習は厳しい。しかしそれは充実の厳しさでもある。
「毎日きついんだけど、前を向いている感じです。かける言葉も明るくなったし、本当にシャンソン化粧品に来て、また違う自分になれたような気がします。それが本当の自分なのか、まだわからないけど、今までとは違う自分なのかなと思います。プレー面はまだまだだけど、気持ちの面で充実しています。だから楽しいです。きついけど、楽しいです!」
シャンソン化粧品では、デュアル・キャリアを歩み出した藤岡に注目が集まっている(彼女については本サイトで石崎巧氏が寄稿予定。乞うご期待!)。しかし大沼美琴も忘れてはいけない。
派手さはない。
しかし彼女の鈍い光沢は、名門チームと、彼女自身の輝きをもう一度取り戻してくれる。
シャンソン化粧品シャンソンVマジック #23 大沼美琴
これまでとは違う自分を楽しんで
前編 誰かのためにから自分のために
中編 新天地でのリスタート
後編 「きついけど、楽しいです!」
文 三上太
写真 W LEAGUE