「代表活動は東京で終わりかな」から一転「あっ、パリを目指そう!」と思えた反骨精神
ENEOSサンフラワーズ在籍中に7連覇し、2019年アジアカップで4連覇を果たしたときはベストファイブに選ばれた。素晴らしい活躍をし、幾度となく頂点に立っても、優勝会見での宮澤は常に反省会を繰り広げ、チャンピオンらしくない表情を見せてきた。しかし、東京オリンピックの決勝を戦い終えた後、「やりきった」「悔いはない」とはじめてではないかと思うほど反省なき満足そうなコメントを見て、逆に不安に思う。もしかすると、このまま引退してしまうのではないか、と。
オリンピック期間中、宮澤は心の中で「バスケを辞めようとは思っていなかったけど……代表活動は東京で終わりかな」と考えていた。完全燃焼したオリンピックから75日、新たなチャレンジとなる富士通での開幕戦までの心境を明かしてくれた。
「オリンピックで銀メダルを獲って、目標は金メダルでしたが、決勝でアメリカに負けて、悔しさも残ったけどしっかりと結果は残すことができた大会でした。それ以降、富士通に移籍して、もう新チームだったのでモチベーションも高いままスッと入ることはできました。でも、コロナなどいろんなことがあってなかなか練習できない期間があり、自分としては早く富士通のバスケットをしたいし、みんなと合わせたかったですが、バスケットができないもどかしさがありました。でも、その間に3ポイントシュートだけではなく、ポストのオフェンスやスキルなどを教えてもらいましたし、富士通のディフェンスを練習しながら段々と新しいチームのバスケットに慣れてきたな、と感じているところです」
モチベーション高く新シーズンを迎えられただけで、この移籍は成功だった。一息ついたあと、これまでと同じく宮澤らしい反省会がはじまったことに安堵する。
「開幕戦で全てを表現できたかと言われればそうではないし、これからかなとは思っています。リバウンドでも、もうちょっと気を利かせて、ローテーションの後のリバウンドが今日は取れていなかったので、そこはもう少し自分が逆サイドのビッグマンにボックスアウトして…とか、そういうことをもっとやれば良かったなと今は思っています」
これまでは連覇を重ねるために、またリーグが終わればすぐにはじまる代表活動のために課題を口にしてきた。常に先を見据え、成長するためにも “宮澤反省会” は不可欠だった。だが、東京オリンピックが終わり、次を考えていなかったことが、逆に充実したコメントにつながっていたわけである。決勝では75-90で敗れた結果を振り返り、宮澤の闘志にふたたび灯がともる。「あっ、パリを目指そう!」その言葉を聞き、ふたたび安堵させられた。
トム・ホーバス前ヘッドコーチはそれぞれに役割を与え、宮澤はシューターとして全うした。恩塚亨ヘッドコーチに代わった女子日本代表は、選手それぞれの特徴を生かすスタイルである。富士通ではポストプレーも磨きながら武器を増やしており、これからの “宮澤反省会” が楽しみになった。
次戦(10月30日・31日)はホームのとどろきアリーナ開催を迎え、その後も宮澤にとっては地元神奈川での試合が続く。
「神奈川に戻ってきて、こうしてバスケットができることが自分自身にとってもうれしくて、楽しいです。地元の友達からがんばってとか期待されていることも分かっているので、そこに応えたいと思っています。いろんなチャレンジがあっての移籍だったので、しっかりと自分の仕事をして、富士通に貢献して、優勝できるようにがんばります」
文 泉誠一
写真 W LEAGUE