前半を同点で折り返し、第3クォーターが終わった時点でもビハインドはわずか1点。しかし第4クォーターの序盤で日本は9点差まで突き放されてしまう。
そこから長岡萌映子(トヨタ自動車アンテロープス)の3本のフリースローで6点差に迫ると、それ以降の得点すべてに藤岡は絡む。
まずは藤岡の3ポイントシュートで3点差。
藤岡からのロングパスを受けた長岡のファストブレイクで1点差。68-69。
そして次のプレー、逆転につながるプレーこそが藤岡と髙田の合わせだった。
長岡のレイアップシュートがリングに嫌われ、リバウンドを取った宮澤夕貴がシュートを放つもブロックされてしまう。ルーズボールを藤岡が抑える。いったん長岡に預けると、藤岡は左サイドのコーナーで再びボールを受ける。得意のクロスオーバードリブルでミスマッチのディフェンスを抜き、次のディフェンスがヘルプに来るタイミングを見計らって、エルボーからダイブしてきた髙田にパス。髙田はディフェンスに迫られながらもレイアップシュートをねじ込んだ。
バスケットカウント。
ボーナススローも決まって71-69。
その後中国のファストブレイクで追いつかれるが、最後は宮澤とのハンドオフからボールを受けた藤岡が、トップにポップした宮澤へアシスト。3ポイントシュート。74-71。
決勝点は宮澤の3ポイントシュートだったが、髙田はそのひとつ前、藤岡との絶妙な合わせの感覚が忘れられず、だからネオと一緒にまたやりたいんだ、と言うのだ。
藤岡が言う。
「自分は競技力の向上に人間力は欠かせないと信じていて、それに当てはまる選手の一人がリツさんだと思うんです。そういうところも気が合うのかな」
片想いだと思っていた想いが、実は両想いだった。でもそれに気づいたときには、すでに自分は違う道を歩むことを決断していた。ドラマのような現実は、しかし、否応なく藤岡麻菜美と髙田真希を次のステージへと運んでいく。
千葉英和高校のアシスタントコーチと、新体制を敷く中で悲願の日本一、そして1年延期された東京オリンピックに挑む現役アスリート。
2人が再び交わるときは来るのだろうか──。
元JX-ENEOSサンフラワーズ 藤岡麻菜美
信念を貫いて
part1「もう本当に続けてもダメかな……」
part2「過程にこそ結果以上の価値がある」
part3「新たな挑戦を次世代の子らとともに」
※JX-ENEOSサンフラワーズは2020-21シーズンより「ENEOSサンフラワーズ」に名称変更をしたが、本記事は改称前の「JX-ENEOSサンフラワーズ」で統一します。
文・写真 三上太