part2「過程にこそ結果以上の価値がある」より続く
新たな挑戦を次世代の子らとともに
新型コロナウイルスの影響でスタートは遅れたが、藤岡は今、母校・千葉英和高校女子バスケットボール部のアシスタントコーチを務めている。自らの信念に従い、自らの経験を後輩たちに伝えるべく、恩師である森村義和ヘッドコーチをサポートする。
ただそれで収入を得られるわけではない。同時にクラブチームを立ち上げ、そこで収入を得ようと考えている。しかしそれもわからないことだらけだ。もしかしたら会社を立ち上げたほうがいいのかもしれない。
「リツ(髙田真希)さんが会社を立ち上げたでしょう。それを聞いて、会社を立ち上げるのもひとつの方法なのかなって。ただゼロから一人で立ち上げるのは本当に難しいから、いろいろなノウハウを聞いて勉強していこうかなと思っています。リツさんからも『なんかあったら言ってね』って言われているので、相談しようかなと」
幸いにも時間はある。放課後の練習までそうした勉強もできる。
指導者としてもはじめの一歩を踏み出したに過ぎない。こちらもまだわからないことのほうが多い。
ただ自分が経験してきたことは生かせられると思っている。
スキルや戦術に限った話ではない。
たとえばケガに対するアプローチ。若いころからコーディネーショントレーニングなどで体の使い方を学び、練習後のケアまでしっかり指導できれば、自分と同じように相次ぐケガで苦しむ選手を少なくできる。
「バスケットって全部が全部まったく同じシーンはないですよね。だから練習をやればやるほど、いろんな経験を積めるし、毎日きちんと練習するだけでも差がつくから、本当にケガをしている期間はもったいないんです。たとえばユラ(宮崎早織・JX-ENEOS)はこれまで大きなケガをしたことがないから、そういう気持ちはまったくわからないかもしれないけど、それでも毎日練習をしているだけあって、やるだけどんどんうまくなっていると感じます。もちろんケガで休んだり、そうした経験をして頑張れる選手もいるけど、やっぱりコンスタントにずっと練習をやっている人のほうがいい選手にはなるんだと改めて確信しました」
指導を重ねていくなかで、ケガに泣かされる選手もいれば、ケガとは無縁の選手も出てくるだろう。そんなときケガに無縁な選手が、ケガに泣かされている選手の気持ちを汲んで戦う。そういうチームを築いていきたい。
ケガだけではない。
いろんな考えを持つ選手が一つのチームに集まれば、さまざまな場面で意見の相違は生まれる。でも溝が大きくなる前に指導者がしっかりと手を打っていれば、間違いなくその溝は埋められる。そうした考え方をひとりでも多くの子どもたちに伝えたい。