part2「日本は危ないチームだと思っている」より続く
オフェンスはディフェンスから始まる
トヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチ、ルーカス・モンデーロのバスケットは常にディフェンスから始まる。これもまた「ひとつのチームに築きあげて戦う」のと同じ、彼が持つバスケット哲学である。
「簡潔に言えば、オフェンスはディフェンスから始まるよ、ということです。ディフェンスができなければチームではありません。しかも相手のミスを待つのがディフェンスではありません。ミスをさせるのがディフェンスです。勇気をもってリスクのあるプレーを取っていくわけです。ディフェンスからオフェンスに対してアタックしていくと言い換えてもいい。もちろん相手をゼロ点に抑えることは不可能だし、シュートを決められる可能性はあります。ただ常にディフェンスから始まるという考え方を選手たちがしっかりとインプットしてコートに入れば、高いリズムでプレーに入れます。スペーシングもうまく取れますし、スピードを出した、私たちの好きなプレーに入りやすいんです」
今のトヨタ自動車の課題はそこにあるとモンデーロは言う。チームディフェンスの波をいかに小さくし、安定させていくか。モンデーロの求めるアクティブで、アグレッシブなディフェンスには集中力とコミュニケーションが欠かせない。
「あとは、ディフェンスリバウンドをしっかり取ってランすることでリングまで速く持っていけるんですけど、集中力が切れて、コミュニケーションも取れていないとリバウンドさえ獲れなくて、しっかり走ることもできません。集中力とコミュニケーション、リバウンドが今のチームの課題でしょう」
どこか「世界のなかの日本」にも似たチームをいかに築き上げるのか。Wリーグも佳境に入っている。モンデーロの手腕をこれまで以上に注目してみたい。
情熱が冷めるまで自らを磨き続けていく
世界一にこそなってはいないが、オリンピックとワールドカップのファイナルの舞台に立ち、チームとしてもスペインと中国、ロシアでは優勝を経験しているモンデーロは、今後どこへ向かおうとしているのか。目標を持つことがその人の人生にとって大きな価値あるものだとしたら、今の彼の目標は何なのだろう?
スペイン代表を率いる世界の名将へのインタビューが決まったとき、聞いてみたかったことの1つだった。
モンデーロは言う。
「最終目標やゴールはありません。私はすでにオリンピックにも出場していますし、ワールドカップにも出ています。そういった目標はないのですが、あえて言えば、今いるチームの成長につながるような練習をして、自分自身もコーチとしてもう少し磨いて、満足できるような立場になることでしょう。もしバスケットの指導ができなくなったときは家に帰りますよ」