トヨタ自動車には長岡萌映子、馬瓜エブリンなど日本代表候補に名を連ねる選手がいる。彼女らの攻撃力、積極性を認めながら、それをよりよくするための戦術をモンデーロはトヨタ自動車に持ち込もうとしている。
そうした動きに合わせて、オフェンスではパスが重要になってくるとモンデーロは明かす。悪いパスを出すとスペーシングもタイミングもすべてがズレてしまうからだ。
つい最近 ── といっても1年くらい前だが、こんな話を聞いたことがある。日本に来る外国人指導者の多くが日本の子どもたちを見て、「1対1やドリブルのスキルは高いが、パスのスキルは低い」と。モンデーロも同じように感じているのだろうか。すると彼は、それはちょっと聞き捨てならないなといった表情でこう返してきた。
「確かにそうかもしれません。ただ日本人はパスが上手じゃないというのは大げさだし、少し聞こえが悪いですね。グッドパッサーが比較的少ないと言ったほうがいいでしょう。スペーシングの取り方とタイミング、ボールを持っていない人の動きをしっかり改善すれば、自然とパスの良さにつながっていくのではないでしょうか。また女子バスケットに起こりやすいことですが、渡嘉敷(来夢。JX-ENEOSサンフラワーズ)のような身長の高い選手があまりいないので、ディフェンスがずっとその人を見ていなければいけないという状況にあまりならないのが現状です。するとディフェンスでスイッチをしがちになります。スイッチすることでディフェンスがくっついて守ることになるから、タイミングがずれてパスをしにくくなって、悪いパスになってしまいます」
ディフェンス戦術の選択によってもパスの良し悪しは生まれてくる。さらにモンデーロは日本の特徴をこう指摘する。
「それと、日本人はドリブルをたくさんついてしまう傾向があります。その弊害として悪いパスにつながりやすいとも言えます。また小さいころにフルスピードで、ポゼッションの多いプレーをする傾向が多かったから、1回、2回のターンオーバーをあまり気にしない傾向があるのではないでしょうか。小さいころからターンオーバーにつながらないよう、ボールをもっともっと大事にしていくことを教育してあげるべきでしょう」
ターンオーバーを気にしすぎて、プレーが消極的になるのはよくない。しかし積極的なプレーのなかでターンオーバーをしないような意識付けができれば、将来的により精度の高いバスケットを展開することができるというわけだ。
part3「オフェンスはディフェンスから始まる」に続く
文 三上太
写真 吉田宗彦