世界トップクラスのヘッドコーチがやってきた!
21年目を迎えるWリーグに世界トップクラスのコーチがいるのをご存知だろうか。トヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチ、ルーカス・モンデーロである。
モンデーロは現役のスペイン女子代表ヘッドコーチで、2014年の世界選手権(当時)と2016年のリオデジャネイロオリンピックで銀メダル(日本はそれぞれ14位と8位)、2018年のワールドカップでは銅メダル(日本は9位)を獲得している。プロチームを率いてもスペイン国内のみならず、WCBA(中国女子プロバスケットリーグ)の山西フレームでリーグを3連覇、ロシアのダイナモ・クルスクでは女子のユーロリーグ ── ヨーロッパの強豪だけが参戦できるリーグ ── で優勝を果たしている。
そう聞けばアンテロープスファンはもちろんのこと、他ならぬトヨタ自動車の選手たちでさえ、リーグ11連覇中のJX-ENEOSサンフラワーズを倒し、悲願のリーグ制覇を期待するかもしれない。しかしモンデーロ本人はいたって冷静に状況を見ている。
「私の哲学をチームに新しく導入していくにはある程度の時間が必要になります。選手たちは今まで日本の教育で育ってきましたし、文化も異なります。日本の文化にしっかりと敬意を払いながら、私が抱えている文化と、うまく合わせていく必要があります。そうしたプロセスを経ようと思えば、どうしても時間はかかってしまうものです。プレーヤーが持つそれぞれのいい部分、日本の文化、私の文化を組み合わせて、いいチームを作っていく。私はそうした考えでチームを作っていこうとしています」
どんなリーグであれ、簡単にチームを作り上げることはできないし、ましてや優勝をすることも簡単ではないと言うわけだ。
むろん、実際に勝敗が分かれるコートの上では勝つことを遠ざけているわけでもない。シーズンが開幕して4ヶ月。コートサイドに立つモンデーロを見ていると、その熱量の多さを感じずにはいられない。選手を叱咤し、チームを正しい方向へ導こうとしている。
「今シーズンの目標はファイナルまで行くことです。来シーズンはリーグ戦、もしくは皇后杯のどちらかで勝つことが目標です。もしくは、どちらもファイナルに行くこと。3シーズン目は私の哲学なども選手たちにしっかりインプットされているでしょうから、2つのタイトルを目指していく。それが今考えている計画です。ただこの計画どおりじゃなくてもいいんです。計画よりも早く優勝する、もしくはファイナルまで行けるのであれば、そのように進めればいい。どのプロセスも時間が必要です。でもそれを言い訳として使いたくはありません。どんなときでも、どんな状況でも私は勝ちに行きたい」
ここに世界のトップレベルで戦う男の矜持を見て取れる。